日本 2019
監督 清水崇
脚本 清水崇、保坂大輔

心霊スポット、都市伝説好きの間では有名な九州の旧犬鳴トンネルを題材としたホラー。
ま、正直なところ、今更かよ、とは思います。
怪談好きを自認する私の感覚からするなら、犬鳴トンネルが大きく話題になったになったのはもう結構な昔ですし、その先に存在したと噂される犬鳴村も今となってはガセだった、とほぼ証明されてますからね。
今、真面目に犬鳴村を語ったりなんぞした日にゃあ、お前、なにも知らないのかよ、とその手のマニアから嘲笑されることは必須。
そんな古びたネタを、なぜわざわざオリジナルストーリーで肉付けして映画化するのか?と。
そのあたりの感覚からして私はもう、よくわからなかったりはするんですけど。
清水崇が噛んでる、と知らなければ多分見てないと思います。
彼なら「ありきたり」も上手に料理してくれるんじゃないか?と。
そしたら、だ。
いやもう本当に驚きましたね。
一体どうしたんだ、清水崇?とマジで仰天した。
いやー、ひどい。
何がひどいって一にも二にも脚本だったりするんですけど、それをありふれた恐怖演出で撮ってる清水監督も正気か?とホント思う。
はっきり言って1ミリも怖くないです。
そもそもなんで普通に犬鳴村が存在してた前提になってるんだよ、と。
しかもダムの底に沈んだ村・・・って、筑豊の炭鉱地帯の歴史を少しでも勉強してたらそんなテンプレートな創作は間違ってもできなかったはず。
100歩譲って「あった」ことにしてもですよ、村の成り立ちとか、生活様式、文化等、一切考察されてないんで、主人公一家が呪われたとおぼしきあとのストーリー展開がデタラメ極まりなくて。
「犬」鳴村だから、その名の通り「犬」神憑き?らしき伝承と絡める安直な発想にも辟易したんですけど、なんでそれが血の継承の問題になって、挙句の果てにはタイムスリップネタにまで発展していくのか、全く理解できなかったですね私は。
終盤の赤子を救うシーンに至ってはもはや茶番の一言。
救わねばならない動機もわからなければ、なぜそれを何十年の時を経て、偶然極まりないタイミングで主人公に託さなければならないのかもさっぱりわからない。
墓場の影に佇んでた兄ちゃんの役回りも終わってみれば意味不明だったしなあ。
なにゆえあのタイミングで実在化して、どう考えても撮影意図のわからん(というか撮る必要性がない)8ミリビデオを見せつけるのだ?と頭の中ははてなマークでいっぱい。
「この先日本国憲法通用せず」の看板も序盤で意味深に登場した割にはなんの説明もないままでしたし。
ラストシーンなんてほぼギャグですよ。
なんだこの「怖そうなシチュエーションをかき集めて寄木細工にしました」みたいな映画は?と心底脱力。
それぞれのエピソードが全くつながらないんですよ。
電力会社を悪者にしときゃあ、それでいいのか?って。
想像の余地を残すことと、想像が及ばなかったので放置したままにしてる、ってのは根本的に違うわけです。
主人公一家の愛憎渦巻く関係性すら満足に描写できてない時点ですでにダメ、といえばダメなんですけどね。
駄作でしょうね。
これじゃあ何も知らないティーンしか騙せないと思います。
なんだろう、清水崇はもう職業監督として瞬間最大風速で消費される映画作りに邁進していくつもりなんでしょうかね?
ジャパニーズホラーももはや終わりなのかな、と遠い目になった一作でしたね。