アメリカ/メキシコ/オーストラリア 2018
監督 ナッシュ・エドガートン
脚本 アンソニー・タンバキス、マシュー・ストーン
信頼していた上司に裏切られ、何もかも失ってしまう主人公の逆転劇を描いたクライム・コメディ。
まあ、悪くはないんですけど。
結論から言ってしまうと、平均的な出来かな、と。
もっと悪ふざけしても良かった、というのがまずあって。
メキシカンマフィアの親分とか、元傭兵の兄貴とか、完全に壊れてるキャラなのにも関わらず、なぜもっといじり倒さないんだ?と。
笑わせたい意図が透けて見えるのに、なんだか全然活躍してくれなくてですね。
登場と同時に、挨拶代わりとばかり少しだけ観客をくすぐって、あとはサブキャラ扱いでなんとなくフェードアウト、ってのが私にはよくわからなくて。
社長と共同経営者のコンビにしたってそう。
滑稽味あふれる演出にはもってこいの素材なのに、どうにも普通にオフィスラブなものだから。
真面目か、と。
まあ、真面目なら真面目でもいいんですけど、それならそれで主人公の追い込みが足りない、と思ったりなんかもして。
もっともっとズタボロにして、命の危機を薄ら笑いでやり過ごすぐらいの「毒あるスリル」があってもよかった、と思うんですよね。
割とね、その場その場の流れでなんとかなっちゃう感じなんです。
そこに逆転劇のカタルシスや、巻き込まれ型サスペンスの御しがたい悲喜はない。
結局、コメディ調ではあるんだけど、なんとなくどっちつかずな感じになっちゃてるんですよね。
シリアスに料理しそこねたみたいな印象を抱かせるのは、決して得策ではないだろうと。
エンディングも中途半端。
敵を徹底的に叩き潰すか、敵すらも羨む幸福を手に入れるか、そのどちらかを形にしてこそ見てる側もスカッとするんであって。
意外にも四畳半的な幸せで良し、としてるんですよね。
いやいやそんなところに意外性は必要ないから、って。
最後だけやたら現実的にしてどうする。
ダメだとは言いませんが、多彩なキャラを用意し、あれこれいじくり倒した形跡の伺える脚本の割にはぱっとしない、というのが正直なところでしょうか。
ジョエル・エドガートンとシャーリーズ・セロンには期待してたんですけどね、いくらでも代わりのききそうな役柄だな、これ、と思えた段階で私の興味は軽減していたのかもしれません。