アメリカ 2019
監督 マイク・フラナガン
原作 スティーブン・キング
あまりにも有名なスタンリー・キューブリック監督作、シャイニング(1980)の40年後を描いた続編。
おそらくみなさんおっしゃってるんでしょうけど、無茶振りすぎる企画なのは間違いないわけで。
シャイニングといえば、もはやある種のアイコンといってもいい伝説的な作品ですから。
それが証拠に、もはや劇場公開から50年近くが経過しているのにも関わらず、解析ドキュメンタリー、ルーム237が制作、2012年に発表されたほどですしね。
つまり、映画ファンは未だシャイニングについて語りたいし、それが商業ベースで成立しちゃうほどの熱気を保ち続けている、ということ。
だからこそワーナーは続編に意欲的になれたのかもしれませんけどね、そんな映画の続編なんて、半端なハードルの高さじゃないわけですよ。
どう考えたってうまくいくはずがない。
たとえそこそこの仕上がりだったとしても、シャイニングのファンが許すはずがない。
多分、続編を撮って許されるのはキューブリック監督本人だけだったと思いますが、すでに鬼籍に入られておられるし、存命だったとしても多分そんな仕事は受けなかったでしょうしね。
要するに、触れてはいけない部類。
完全に事故物件ですよ。
まともな監督ならおそらく二の足を踏む。
よくぞまあ、マイク・フラナガンはメガホン握ったことよな、と思いますね。
若さゆえなのかもしれませんが、大勢から叩かれるのは、作品完成を待つまでもなく明らか。
ま、実際ファンや評論家から公開当時は叩かれまくったわけですけど。
そもそも続編が成立するような内容じゃないですから。
いかんせん、物語は別の方向へと舵を切らざるをえない。
おそらくは原作に忠実に、ということだったんでしょうけどね、それがダメだとは言いませんよ、でもね、シャイニングの続編を「知られざるサイキック大戦争、超能力バトルの勝者は誰だ?」みたいな按配にしちゃったら、そりゃ非難も噴出するわ、って話でね。
しかも、前作では底知れぬ恐怖の対象だった展望ホテルが、単なる「結界」みたいな扱いになっちゃったりしてますし。
熱心なファンとは言えない私でも「滅茶苦茶にしやがって!」と思いましたもん。
当然あの有名な血の海のシーンや、双子、ルーム237も作中で登場するんですけどね、まー、怖くない。
なにかのパロディにすら見えてくるほど。
いやね、決して質が低い、というわけではないと思うんですよ。
シルクハットをかぶったローズのキャラとか、外見と中身のギャップが魅力的だと思いましたし、少女アブラをストーリーの核に据えた作劇もスリル満点で悪くない。
続編ではなく、新解釈のシャイニング、リテイク版という触れ込みなら、ここまで評価がふるわなくはなかったんじゃないか、と思いますね。
前作が、得体のしれない恐怖と狂気に特化した大人のホラーだったとするなら、本作は、わかりやすい敵味方の構図に軸をおいた若い人向けのヒロイック(オカルト)・ファンタジー、といったところでしょうか。
別ジャンルですね、どっちかといえば。
余談ですがこの内容なら、主人公ダンは別にサブキャラでも良かったのでは、と思いますね。
続編という以上、そこは譲れなかったのかもしれませんが。
シャイニングという縛りがなければ化けた作品かもしれません。