監督 アンディ・ムスキエティ
原作 スティーブン・キング
IT/イット(2017)の続編にして完結編。
前作から27年が経過したデリーの街を舞台に、再び殺人ピエロと相対峙することになるルーザーズの面々が描かれてます。
前作はホラー映画史上最高の興行収入を記録した大ヒット作だったわけですが、今回も封切られるや否やまたたく間にチャートのトップを独占。
全世界で4億7千万ドル売り上げた、というんだから尋常じゃない。
ただ、私の場合、記録づくしな功績とは裏腹に、さほど期待値が高まってない自分が居たりもしまして。
私の中では前作、ホラー風味なスタンド・バイ・ミーなんで。
あそこから大きく路線を違えてくるはずもないだろうしなあ、と。
怖くないホラーなんですよね、個人的な位置づけとしては。
怖くないホラーに何を求めればいいのか、答えが見あたらない、というのが実際でして。
で、予想通り本作、怖さをどう演出するかよりも、27年後の大人たちの人間ドラマに力点が置かれててですね、まあ、早い話がおじさんおばさんたちの昔話なわけですよ。
あの頃のように、もう一度団結しようじゃないか、みたいなノスタルジー。
もうね、身も蓋もないこと書きますけどね、普通に故郷の街を出て27年も経過してたらですね、今更「知らんがな!」っちゅー話だと思うんですよ。
それぞれ生活もあるわけですから。
殺人ピエロが復活しようがどうしようが「それはそれ、これはこれ」ってのが普通の大人の反応だと思うんです。
だって、離れてる限り、実害はないわけですから。
なのにルーザーズの面々は、戸惑い、逡巡しながらも、最終的には全員で立ち向かうことを決断したりするんですね。
いや、それはないわ、と。
一応、作中では立ち向かわないと全員死ぬ、という縛りが設けられてるんですけど、これもねえ、本当に根拠が曖昧でして。
そういう悪夢を見た、と言うんですね、紅一点のヒロインが。
夢かいっ!って、なんで誰もつっこまんのだ、と。
結局、大の大人に「死を賭して挑もう」と決心させるだけの動機に乏しいんです。
これがね、裏切る奴らも居て、たった3人で挑む羽目になった、とか言うパターンならわかる。
なにかに洗脳されてるのか?と疑いたくなるような塩梅で全員集合ですからね。
どこまで夢見がちな連中なんだよ、と。
ま、監督があれこれ苦心惨憺してるのはわかるんです。
やたらと27年前の光景をフラッシュバックさせたりとかね、盛り上げようと躍起になってるのは理解できる。
でもやっぱりこれはおとぎ話だよなあ、と。
そしてこの手のファンタジーが許されるのは、やっぱり子どもたちが主人公である場合だけだと思うんです。
40~50代のおじさんおばさんたちのダークファンタジーな冒険譚が痛くないはずもなくて。
また、酸いも甘いも噛み分けた大人なはずなのに、ルーザーズの面々があまりに行き当たりばったりなのも私を醒めさせた要因のひとつ。
なんで知恵を絞るでもなく、計画を練るわけでもないままピエロに挑むんだよ、って。
自殺願望でも抱えてるのか、と。
結局、前作の焼き直しになっちゃってるんですよね。
登場人物が年食っただけの。
ピエロの正体や、その顛末も興ざめ。
こうしておけば「なんでもあり」と思ったのかも知れませんが、逆につっこみどころが無数に浮上してくる結果になる、となぜ気づかないんだろう、と。
なんだろ、何者でもない映画って感じでしたね。
これで3時間はどう考えても長すぎる、と思う次第。
劇中の、瞬発力の高い脅かしにびっくりさせられたことは認めますが、それ以外で評価できる部分は少ないですね。
というか、怪獣映画なのか?と少し思った。
うーん、前作を下回った、というのが私の結論。