日本 2019
監督 蜷川実花
原作 平山夢明
殺し屋専門の会員制ダイナー(レストラン)に売り飛ばされた女と、店主であるコックを描いた裏社会ドラマ。
さて私は、原作を数年前に読んでて、平山夢明がこんな小説を書くのか!と唸らされたクチだったりするんですが、いやー蜷川実花、ほんと好き勝手滅茶苦茶にしてくれやがりましたね。
原作ファンは多分怒ってると思う。
なんで安っぽい少年漫画みたいになってるんだよ!って。
だって藤原竜也がボンベロですよ?
ほかにもスキンとか無礼図(ブレイズ)とかコフィとか。
いやいやお前ら全員日本人じゃねえかよ!って。
なんで裏社会に巣食う犯罪者共が、揃いも揃ってハンドルネームというか源氏名みたいなので呼ばれてるんだよ!と。
無国籍風にしたかったからカタカナ名で通した原作の意図を、1ミリも理解してない。
実写でそのままやってどうするって。
また衣装がもう、これから劇団四季のステージにでも上がるのか?と言いたくなるような大仰さで。
特に真矢みきとか真琴つばさの元宝塚組ときたら、男役をネタにされてるとしか思えないいでたちでして。
ギャグなのか?これは?と少し悩んじゃったよ、私は。
土屋アンナを筆頭に、他のキャラも相当に紙一重。
もう、色々しくじってる地方のビジュアル系バンドみたいになっちゃってる。
非合法組織に生きる連中がですよ、揃いも揃って超目立ってる時点で説得力皆無なわけですよ。
このお話はどこにも存在しない架空の街で繰り広げられるダーク・ファンタジーなのか?と。
ゴッサムシティでバットマンなのかよ、って。
開始30分でこりゃもう真剣に見ちゃいけない、と観念。
いかに蜷川実花の美的センスとシンクロできるか、それがすべて。
ま、写真家出自ならではの構図や位置取り、このシーンをこんなイメージで絵にするのか、といった驚きがなかったわけではありません。
色彩感覚も頭抜けてる。
そのこだわりに価値を見い出せなくはない。
こういうことやってる日本人監督って、ほぼ見かけないですしね。
けど、やっぱり片手落ちですよね。
私が不思議だったのは、ここまで絵にこだわるのにも関わらず、物語に脈打つ美意識をまるで理解するそぶりが監督にないことですね。
特にラストシーン、あれはないわ。
原作を改変するにしても一番やっちゃあいけない部類のオチ。
きっと蜷川監督は物語に興味がないんでしょうね。
ストーリーは自分が表現したいものを形にするための素材でしかないんでしょう。
むしろ原作なしでアート系へと衝動の赴くままひた走った方がものすごいものを撮るかもしれない、と思わなくはない。
あとこの映画、過分に役者に助けられてます。
特に藤原竜也、よくまあこんな荒唐無稽のおもちゃ箱に居並べられて、あんな迫真の演技ができたものだ、と心底感心。
彼の存在がかろうじて映画を成立させてますね。
藤原竜也のおかげで最後まで見れたようなもの。
怪作ですね。
普通に評価するには埒外すぎる、といったところでしょうか。