1986年初出 水樹和桂子
ハヤカワ文庫 1~2巻(全15巻)
おそらく卑弥呼以前の日本の古代を舞台とした作品だと思うんですが、そこまで遡ってしまうともう参考になる文献すらほとんどないわけで、そういう意味では異世界ファンタジーと言っても良いのかも知れません。
多分作者は新たなる壮大な日本の神話を自分の手で作り上げたかったんでしょうけど、私が読んだ2巻までの段階では思想や主義を異にする二つの集団の群像劇に終始。
見えざる神の存在や、真言告と呼ばれる超常能力を喚起する呪文など、興味深い設定はいくつかあるんですが、この手の物語にありがちな仕掛けで道具立ててあり、正直予想を裏切る何かは一切なかった。
この作品が連載された時代を振り返るなら、どうしたって長くならざるを得ないこの手の挑戦が野心的であったことは評価すべきだと思うんですが、今読むとやはりですね、何に影響を受けてて、どんな風にしたいのか、全部わかっちゃうんですよね。
見事に少女漫画におけるSFファンタジーの血脈を受け継いでる、というか。
掲載紙が当初はぶ~けであったことも影響しているのかもしれませんが、もっと読者をつきはなしても良かったのでは、と思ったりもしますね。
勝手な言いぐさですが、知り得ぬ世界をあれこれと想像させてほしかった。
さらに言うなればもっと残酷で野蛮だと思うんですよね、こういう時代のストーリーって。
少女漫画的な上品さ、繊細さがそれを邪魔しているような気がします。
なんせ長期連載作品ですんで、後半にて化けるのかもしれませんが、どうにも続きを読もうという気になれず。
緻密に描き込まれた背景や、美麗でブレない高い作画能力は素晴らしいと思います。
それを否定するつもりはない。
けれど、先達にリスペクトを捧げるオマージュで良しとするのではなく、なにかプラスアルファを提示してほしいと考える私のような読者からすれば物足りなさは否めない、といったところでしょうか。
コメント
[…] イティハーサを読んだときの感想と同じことをまた書いてますけどね、私。 […]