1989年初出 山上たつひこ
秋田書店
最終回らしい最終回を描かないまま突如連載中断となったのが1980年。
それから9年を経て、少年チャンピオン40周年の企画として全12回で復活した「がきデカ」完結編が本作。
いやもう当時は感激のあまり小躍りしたくなりましたね。
2度と描かれることはないんだろうなあ、と思ってましたから。
ただ、不安はあった。
ギャグ漫画家って、旬の時期が短いですから。
鴨川つばめも江口寿史も相原コージもみんな描けなくなっちゃいましたし。
がきデカの新作は読みたい、でも、くすりとも笑えないつまらないこまわり君は見たくない。
不安と葛藤に責めさいなまされながらページをめくること数十分、すべては杞憂であった、と心の底から破顔する自分がそこには居ました。
全盛期と全く変わらぬギャグのキレ。
変わらぬ高い画力に、下品さもかつてにまして山盛り。
恐るべきは、最後のシリーズだというのに新しいパターンのギャグがあったり、時代に合わせて西城くんやモモちゃん、ジュンちゃんのキャラに微妙な修正が施されていたりまでする。
なんたる漫画家か、と私は打ち震えましたね。
もうね、全然まだまだやれるんですよ。
時代は吉田戦車の登場によって、劇的に変わろうとしてましたが、全く負けてない。
私の感覚では、バットに当たったときの飛距離はこちらの方が上。
なのにこの作品を最後に、漫画家としての筆は置く、と言う。
晩節を汚さぬ見事な去り際に、私、もう涙目です。
がきデカの最終章読んで、鼻をぐすぐす言わせてるのは多分私ぐらいだろうと思います。
よくぞ描いてくれた、とただただ感謝ですね。
少年時代のバイブルが旧シリーズだとするなら、大人になってからのバイブルは間違いなくこの1冊。
天才ギャグ漫画家山上たつひこの幕引きを飾る記念碑的一作でしょう。