スペイン/ルーマニア/ロシア/フランス 2014
監督、脚本 マヌエル・マルティン・クエンカ
猟奇趣味満開のスプラッターなやつかな、と思いきや、それっぽい描写は極力控え目な落ち着いたタッチの作品でした。
ホラーというより、普通に大人のサスペンス、って感じです。
孤独と屈折から禁断の行為に手を染めてしまった仕立て屋の男の裏の顔が淡々と描かれているんですが、その内側に秘められているであろう狂気が、変に演出で煽らない作風であるが故にひどくリアルです。
白眉はやはりクライマックス、山小屋でのシーンでしょうね。
主人公の朴訥な告白は、すべてを捨てることになってもそう告げずにはおれない彼の心情の変化を見事に表現していて、思わずああっ、と声が漏れました。
極端かもしれませんが、もうここで終わってもある意味よかったのでは、と私は思います。
以降のシーンは感情任せなアクシデントに結末を依存していて、ちょっと蛇足気味かな、と私は感じました。
スペインの山々の雄大な自然を背景に、二人の顛末を締めくくって欲しかった、と言うのが正直なところ。
実に見応えのある一作ですが、さらなる高みを目指せるだけの余地はまだあったように思います。
いや、おもしろかったのは確かなんですけどね。