ハンガリー 2014
監督 ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
脚本 バーリント・ヘゲドゥーシュ、ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ

いやもう、最高の一言。
なにからなにまで私の嗜好にどストライク。
まさかハンガリーからこんな映画が飛び出してくるなんて、と驚きを通り超えて唖然とすらした。
オープニングからバカ笑いが止まりません。
だってね、三十路を迎える孤独な女性看護士の元に日本人歌手トミー谷の幽霊が現れて、いきなり一緒に昭和歌謡を歌い踊りだすんですよ?
それが見はじめて10数分でのシーンなんですから、度肝をぬかれるとはまさにこのこと。
はあ?何を言ってるんだこいつ、と思うでしょ?
でも、何も誇張してません、全部見たまま。
インド映画も腰を抜かす奇天烈ぶりにあたしゃもう目が点。
で、もちろんトミー谷はトニー谷のもじり。
なんでハンガリーでトニー谷?と言う部分からしてわけがわからないんですが、昭和歌謡で中途半端にミュージカル仕立てというのもさらに輪をかけてわけがわからない。
しかも楽曲は全編オリジナル、ときた。
さすがに歌詞は凄いことになってますが、曲の完成度、これ驚く出来映えだったりするんです。
よくぞここまで忠実に日本の懐メロを模倣したものだな、とつくづく感心。
何ゆえ監督はこんなに日本が好きなんだ、と言う部分からして恐ろしく謎なんですが、独身女性の恋路を描いたコメディにトニー谷という異文化の異物を放り込む、という発想は凄まじいものがあったように思いますね。
いったい誰がこんなこと思いつくんだ、と。
もう天才と紙一重のレベル。
さらには、ただ突飛なだけじゃなく、思いのほかシナリオがちゃんとしてるのがいいんです。
とんでもなく異彩をはなつ作品ながら、不思議にかわいらしくファンタジックな純愛ものとしてきちんと出来上がってるんです。
誤解を恐れずに言うなら、私はこれ、アメリの衣鉢を継ぐ作品だ、と思った。
三谷幸喜じゃねえかよ、という人がほとんどかもしれませんけど。
まあとにかく一度見て下さい、と。
バカ映画といっちゃあそれまでですが、ハンガリーのような旧共産主義国からこのような逸材が登場したことにあたしゃ心から喝采を送ります。
なにはともあれトミー谷だ。
はっきりいってトミー谷のミュージッククリップ集が私は今、とてつもなく欲しいぞ。
最近見た映画が全部吹き飛ぶ勢いで大好きですね、これ。