蔵六の奇病

1976年初出 日野日出志
ひばり書房ヒットコミックス

これまた日野ワールド全開な狂った一冊。

簡単にストーリーをかいつまむと、精神薄弱な主人公蔵六が全身にできた七色のできものからしたたる膿で絵を描こうとするお話。

もう、間違いなく今の時代には描けません。

一から十までアウト。 

シナリオだけ追うと幻想文学的でもあるんですが、実際に読むとあまりのおぞましさに軽く胃液が逆流します。

あえて深読みするなら、閉塞した村社会における差別を問う重いテーマが根底にはあるような気もするんですが、結局のところ人間に絶望してる作者がグロテスクな奇想を披露しただけ、と言う気もしなくはありません。

もうね、ほんと何を読ませるんだ、と。 

突き詰めるなら、私は作者の絵柄がダメなんだと思いますね。

もしこれが小説だったり、ギリギリのラインでつのだじろうの作画だったりしたら、きわどいところで踏みとどまれたかもしれない。

いったい何を踏みとどまるのかはさっぱりわからなかったりはするんだけど。

初期の作品は全てがある意味で伝説化してますが、それに食指をそそられて購入に踏み切ったりすると、おそらく現代漫画に慣れた目ではひどく後悔すると思います。

先駆というより徹底的に異端。

なんだかもうこれって、ホラーでもスプラッターでもなくて、汚穢の中に美を見出そうとする性癖なのでは、と私は思ったりしました。

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