1983年初版 山上たつひこ
秋田書店チャンピオンコミックス
いつものギャグ路線ではあるんですが、時流を意識したかのようにさりげなくスポ根とラブコメをとりいれた超異色作。
オリジネイターであるはずの山上たつひこまでが流行に迎合しちゃうの?と当時はショックでしたね。
高橋留美子か、はたまたあだち充か、ってな按配で青春路線な描写の数々は、がきデカ世代には衝撃ではありました。
まあ、それでもいつもの下品さは損なわれていない、というのがすごいと言えばすごいんですが。
ただ、作者自身が途中で嫌になったのか、飽きちゃったのか、物語は終盤、なぜか動物3人組が主人公になり代り、投げ出すように終わってしまいます。
無理してたのかもしれませんね。
しかしながらこの作品、基本設定やキャラ、プロットそのものは異様によく出来てるんですよね。
力の出し方が調整できず、無敵なのに勝ち星をあげられない主人公の柔道部員、美少年の日高君。
なぜかお父さんはゲイバーの美人ママ。
そんな日高君に思いを寄せる秀才の杉村君。
何故か彼は興がのってくると立原道造の詩をそらんじたりする。
イギリス人を最高の民族と言い切る同じ柔道部員のハーフ、南君や、何故か手足がヒズメな百川君、顧問の下腹部先生のキャラも笑えていい。
ヒロインの2人組がらしくなく可憐でかわいいのも過去の作品にはなかった傾向。
これ、違う漫画家が同じシナリオで、マガジンあたりでやったら意外に人気が出たのでは、という気すらします。
でもそこを割り切ってやらないのが山上たつひこなんでしょうけどね、きっと。
ファンからは評価されない作品かもしれませんが、本来の持ち味と80年代的軽佻浮薄が入り混じったカオスな内容は、どこか新鮮さもあって、私は嫌いじゃないですね。