イギリス/ブラジル 2014
監督 スティーブン・ダルドリー
原作 アンディ・ムリガン

リオデジャネイロ郊外の貧民街を舞台に、ゴミを拾って暮らす少年達3人組の、命がけの権力との駆け引きを描いた作品。
まず私が感心したのは宣教師以外、誰一人として気にすることもない虫ケラみたいな子供達の等身大の生き様を、徹底してリアルに描いていること。
日本でなら手厚い保護があって、普通に教育をうける権利が保障されているであろう中学生がですね、ゴミを拾って糊口をしのいでるんですね。
3人組の1人にいたっては下水管を寝床にしているような有様。
誰も手を差し伸べません。
警察ですら敵。
貧民街の子供ひとり痛めつけるのになんの躊躇もありません。
痛々しい、と言葉にするのが不遜に思えてくるほど悲惨な境遇です。
そんな「なにもない」少年達がですね、ゴミの山から街ぐるみの汚職の証拠となる財布を発見したことで状況はめまぐるしく変化します。
平気で少年達を殺してしまおうとする汚職警官、それをチームワークと知恵でなんとかかわし続ける少年達。
このギリギリの攻防がおもしろくないはずがなくて。
文字すら満足に読めない少年達が、いかにして財布の謎を解き、真相に迫ったか、決してファンタジーにしなかった監督の手腕は見事だったと思います。
またこの作品がすごいのは、手を緩めることなくブラジルの暗部をリアルに描いているにもかかわらず、どこかからっと明るい質感があって、少年達の冒険をつづったアドベンチャーのようにも感じられることでしょうね。
ちょっとラストが薄甘いかな、と思ったりもしたんですが、胸が熱くなる一作であることは間違いなしです。
秀作でしょう。
劇中のセリフである「正しいことをする」、この言葉の重みを私は噛みしめざるをえませんでしたね。