サハラ

1973年初出 小池一夫/平野仁
小学館文庫 全8巻

1960年代のアフリカ、アンゴラを舞台とした女性だけの傭兵集団の、血と謀略の日々を描いた作品。

60年代の暗黒大陸の政情なんてまるで知らない私ですが、普通にストーリーを追うだけで、何故長い間内戦に苦しめられ、ポルトガル政府が戦争に加担しているのか、全部わかってくるのだから本当に漫画もバカにできない、とつくづく思った次第。

またそれをエンターティメントの世界で描ききってしまう小池一夫の博識、怪物ぶりにほとほと感服。

女性だけの傭兵集団、までは誰でも思いつく、と思うんです。

でもそれをファンタジーや内輪受けなSFでごまかさず、きちんと現実の世界でもっともらしく調理してみせる手腕はひりつくようにリアルでさすがの一言。

凄絶な過去を持った女達が、死と隣り合わせに明日なき明日を生き抜いていく物語ですんで相応に重苦しくはあるんですが、そんな環境でしか語れぬ哲学や価値感があまりにエキセントリックでページをめくる手を止めさせません。

特に部隊の長であるヒステリーカの言動はどこへ向かおうとしているのか、全く予測できなくて実に刺激的。

中盤から傭兵集団の活躍はアメリカ、ヨーロッパに拠点を移し、非合法組織と暗闘する展開にシフトしていくんですが、これがまた前半にも劣らず読み応えあり。

強い女が活躍するバイオレンスが好きな人は必携でしょう。

残念だったのは突然予告なしで打ち切りでもくらったかのようにいきなり終わってしまったこと。

女としてどう生きていくべきか、答えを見出せぬヒステリーカになにがしかの救いを与えてやって欲しかった、と思いましたね。

あと、これは個人的な好みなんですが、作画を池上遼一にやって欲しかった。

力のある作画だ、とは思うんですが、ちょっとね、好きになれない絵なんです。

池上遼一なら副長ボーデンレガーをもっと強烈なインパクトでデザインしていたように思う。

今あらためてリメイクしても意外に人気が出るのでは、と思えた一作。

あまり話題にのぼりませんが、小池劇画の現代劇の中ではかなり上位の出来映えであるように思います。

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