春が来た

1976年初出 小池一夫/小島剛夕
双葉社アクションコミックス 全8巻

大奥お庭番として50年以上にわたって禁欲生活を送り続けてきた忍者と、町方十手ものとして妻も娶らず職務にいそしんできた二人の、退役後の人生を描いた時代劇。

当時にしては相当斬新なストーリーだった、と思います。

なんせ主人公の二人が齢60を数えようか、というジジイなんですから。

人並みの生活を送ることも叶わず、ただ実直に職責を担い続けた老人達が、老後に人生を取り戻すことができるか?が作品のテーマなわけですが、恐るべきは未曾有の高齢化社会を迎えた現在日本の抱える問題と内容が微妙にリンクしている点でしょうね。

まさか予見していた、なんてことはないと思いますが、時代は違えど今だからこそ興味深く読める部分は過分に内包しているように私は思います。

少なくとも「老後の生」をどう生きるか、のヒントにはなると思う。

もちろん小池劇画ですんで、誰もがこうあってほしい、こうありたい、と思う姿をドラマチックに、ケレン味たっぷりに、具現化しているのは確かで、こう都合よくはいかないだろう、というつっこみもきっとあることでしょう。

でも希望をもてそうな気にはなると思うんです。

そのことだけでこの奇抜なプロットの作品は後世に伝えられる価値はあると思う。

きちんと完結していないのが残念ですが、私は読んでいて、こんなクソジジイになりたい、と思いましたね。

若干コメディ調なのもこのコンビの従来の路線を上手に裏切ってる、と感じました。

あまり話題にのぼらないシリーズですが、私は好きですね。

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