1978年初版 小池一夫/石ノ森章太郎
講談社KCスペシャル 全3巻
1946~1960年の間に片岡千恵蔵主演で11作品が公開され、大人気を博したシリーズの漫画化作品。
とはいえ、漫画では二代目多羅尾伴内が主役を張っており、正確に言うなら映画の続編を意図した、というべきか。
しかしすごい顔合わせだなあ、と思いますね。
小池一夫と石ノ森章太郎って・・。
両作家とも作風が確立した描き手(書き手)だと思うんですが、メディアミックスとはいえ、個性がぶつかり合わなかったのだろうか、と。
特に小池一夫は原作を必要としない漫画家と組んだことって、ほぼなかったと思うんですよ。
石ノ森章太郎も平井和正を除外すれば同様。
お互い、妥協点を探りながら連載を進めていったのかなあ、などと思いながらページをめくっていったんですが、うーん、これ、噛み合ってないですね、やはり。
多分、石ノ森章太郎は小池一夫の原作通りに漫画描いてない、と思う。
らしさをふりまきつつも、最終的には自分の流儀で各話を締めくくってる気がする。
で、それがどっちつかずの中途半端さ、しいていうなら煮えきらなさを感じさせる羽目に。
ま、題材そのものが古すぎる、というのも実際問題としてはあります。
だってね、知らないですもん多羅尾伴内自体を。
明智小五郎や金田一耕助は知ってますけど、多羅尾伴内って、私よりさらにご年配な方々の記憶にしか残ってないムービースターだと思うんです。
78年に本書を原作として小林旭主演で映画が二本撮られてるらしいんですが、興行的に失敗して、以降は一切音沙汰なしですしね。
旧シリーズにしたって映像作品として高い評価をうけ、後世にまで語り継がれてるというわけでもないみたいですし。
思い入れもなければ、知るべき動機も見いだせない状況で読んだところで目につくのはちぐはぐさ、荒唐無稽さだけ。
さすがにね、新聞記事を読んで正義を執行するため、わざわざ警察の捜査にでしゃばってくる私設探偵の話とか、許容の範囲を超えてるって話で。
今となってはもはや変人の部類ですよ、多羅尾伴内。
小池ファン、石ノ森ファンの双方から首を傾げられられそうな一作。
連載当時は映画の熱を引きずってそこそこの人気を博したのかもしれませんが、令和の時代にあっては過去の遺物と言っても大きく差し支えないのでは、と思える作品でしたね。