バイオレンスジャック(漫画ゴラク版)

1983年初出 永井豪
日本文芸社ゴラクコミックス 全31巻

どういう経緯で未完のバイオレンスジャックの続編を、漫画ゴラクなどというギャンブルと女にまみれて酒焼けしたような青年漫画誌で連載することになったのか、さっぱりわからないんですが、勝手な想像ながら、永井SFをやらせてくれる媒体がもうなかった、ってことなのだと思います。

凄ノ王連載終了後、新作は全部短命に終わってるんですね。

当時、永井豪はもうダメだ、という空気がなんとなく漂っていた気がするんです。

それを察したかのように、実際連載内容も永井豪の過去作のいろんなキャラが次々と登場する集大成的印象を与えるものでした。 

ここで漫画家生活を終わらせるつもりがあったのかもしれません。

わかりませんけど。

連載を追っていて、単純に、次はどんな過去作のどんなキャラが登場するんだろう、という楽しみは間違いなくありました。

あのバイオレンスジャックの続きが読める、という喜びもありましたし。

ただですね、そこに腐心しすぎた、というのは否定できない、と思うんです。

やっぱりね、どう考えても「ドロロンえん魔くん」や「マジンガーZ」がバイオレンスジャックの世界観にそぐうはずもないわけであって。

無理矢理登場させたことで滑稽で陳腐になっちゃってる回がいくつかあるんですね。

掲載雑誌の性格によるものかもしれませんが、必要以上にエロを前面に押し出してるのも気になりました。

花平バズーカのページでも書きましたが、絵柄の変わらぬまま即物的なセックスそのものを、しかも過去作のキャラで描かれちゃったりするとですね、 どうしたって強い忌避感を抱かざるを得ない。

最大の問題点は「拓馬竜が荒れ果てた荒野でどう生き抜いていくか」がテーマの物語だったはずなのに、いつのまにかジャックとスラムキングの物語にすり替わっちゃってたこと。

拓馬の生き様をきっちり描いてこそのジャックの正体、だったと思うんです。

それが完全に失念されてるんですよね。

賛否両論、話題になった最終回も、私にとっては、前述した「欠落」が気がかりなままでしたので、ああ、やっちゃった、程度の感慨しか抱けぬものでした。

ジャックであって、これはジャックでない、と言うのが私の結論。

唯一、これは素晴らしい出来だ、と思ったのが凄ノ王の主人公、朱紗真吾が登場する回で、これを凄ノ王の最終回にすればよかったのに、なんて思ったりもしました。

かつて少年マガジンで連載されたバイオレンスジャックこそがすべて。

私の中でジャックの物語は未完のままです。

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