1985年初出 細野不二彦
小学館少年サンデーコミックス 全6巻
コインロッカーに捨てられていた孤児である主人公少年が、育ててくれた浮浪者たちの支援のもと、サッカーに目覚めていく様子を描いたスポーツ漫画。
最初からスポ根にしようと思ってたのかどうかわかりませんが、作者の特質を考えるなら、なんともらしくないことをやりだしたなあ、というのが当時の率直な感想。
誰も細野不二彦にキャプテン翼やオフサイドを期待してないわけですよ。
もっと幅広い分野で勝負できる漫画家でしょうが、と。
おそらく、高橋陽一は翼しか描けないと思うんですが、細野不二彦はそうじゃないですから。
わざわざ自分から可能性を狭めるようなことをなんでやるかな?という。
スポーツ漫画が悪いとは言いませんけどね、かわいい女子をコケティッシュに描画して80年代少年サンデーに革命を起こした漫画家があえて手を染めるようなジャンルじゃないですよね、どう考えたって。
また、物語の設定がなんとも古臭くて。
コインロッカー・ベイビーに浮浪者って、70年代の題材ですよ。
梶原一騎か、と。
血と汗と涙をもう一度少年誌によみがえらそうというのか?と。
少なくともバブル経済にまっしぐらだった当時の日本を反映したネタとは言い難い。
スタート地点からして決定的にずれちゃってるんですよね。
主人公少年の唇を恣意的に作画したキャラクターデザインも疑問。
なぜ唇?
なんの意図があって?
少年誌で連載を続けることに、なにか迷いがあったのかなあ、と思わなくもありません。
人気もふるわなかったようで、お話がヤマ場を迎える前に6巻にて打ち切り。
そりゃそうだろうなあ。
きっちりストーリーは組み立てられてるし、キャラクターも多彩で質は低くないんですけど、サンデー読者の誰もこれを求めてなかった、というのが実情でしょうね。
作者の歴史を振り返るなら怪作のひとつとしてカウントされそうな一作。
もっと泥臭い絵柄で、70年代に連載されていたら評価は変わっていたかも、という気がしなくもありませんが、どちらにせよ細野不二彦みたいな漫画家のやるような仕事じゃない、と思う次第。