1968年初出 藤子F不二雄
小学館 全8巻
昔、同じ小学館のゴールデンコミックスから全6巻で発売されていたものに未収録の短編を加え、全短編を網羅した完全版ハードカバー集。
とはいえ近年「藤子F不二雄大全集」が刊行され、著者が単行本に収録することを許可していなかったものまでシリーズの1冊として収録されているのが現状なので、厳密には完全版、とは呼べないかもしれません。
おおむね68年以前の短編は藤子F不二雄大全集で読めるようです。
さて、多くの人は藤子F不二雄のことを、ドラえもんの人、もしくは、児童漫画家でしょ、みたいな認識でとらえていることと思いますが、それを根こそぎひっくり返すのが実はこのシリーズだったりします。
もう断言しちゃいますが、珠玉のSF短編といってさしつかえなし。
その着想の独特さといい、作話の見事さといい、オチの鮮やかさといい、唯一無二。
漫画の神様手塚治虫すら超えるのではないか?と思われる短編すらある、というのは少し褒めすぎでしょうか。
絵柄はドラえもんそのままのシンプルな作画なんですけどね、そこにとんでもない毒と未来を予見するかのような恐ろしい先見性があるんです。
どれもこれも素晴らしい出来なんですが、特に「定年退食」や「ヒョンヒョロ」「みどりの守り神」「ウルトラスーパーデラックスマン」「ノスタル爺」「大予言」等、初読から20年以上を経ていまだに記憶に残っているのだからそのインパクトたるや察していただけることと思います。
伊達や酔狂で国民的児童漫画ドラえもんは描けない、それが如実に理解できる作品集です。
間違いなく藤子F不二雄は天才。
ご本人は自分の書いた短編のことを少し(S)不思議(F)などとおっしゃってますが、とんでもないです。
極上の傑作集、読まずに済ますのは損失以外のなにものでもなし。