2010年初出 冬目景
小学館スピリッツスペシャル 1巻(全4巻)
熱心に全作品を追っている、と言うわけではないんですけど、初期の頃に比べてますます作画に味が出てきたなあ、と思いましたね。
冬目景だけの絵が完成しつつあるような気さえします。
はっ、とするような女性の絵を描くようになりましたね、この人。
昔はそこまで思わなかったんですけど。
で、肝心の内容ですが、今回は建物の記憶をたどることの出来る能力者のお話。
簡単に言っちゃうなら、対建造物専門のサイコメトリーの幻想不思議譚、といったところでしょうか。
ホラーやスリラーなテイストはほぼなく、人とは違ったものが見えてしまう主人公のキャンパスライフを描いたドラマ、というのが一番近いかもしれません。
しかしまあ独特な着眼点だなあ、と思います。
ここから話を広げられる、というのもある意味凄いですが、その反面、このプロットではどうしてもニッチになっちゃう、というのは感じたりしました。
特に第6話の、取り壊される建造物にもう一度過去の風景を見せてあげる、というストーリー、これ共感できる読者って、相当柔軟な感性をもった人か、生粋のロマンチストぐらいなのでは、と思ったりするわけです。
作者ならではの作品世界はさらに磨きがかかってみずみずしく豊かだ、と感じはしたんですが、私のような粗忽で不調法な人間にとってはいささか興味の対象が違う方位にある、と思った次第。
どこか気になる部分はあるんですが、 のめりこめない、というのはありました。
従来のファンの期待には充分答える内容だと思うんですけどね。