オーストラリア 2014
監督 スピエリッグ・ブラザース
原作 ロバート・A・ハイライン
まあその、すごく簡単に言っちゃうならタイムパトロールのお話なんですけど、え、これは一体どこへ向かおうとしているの?と、一切の予測を許さない緊張感はしっかりありました。
特に序盤、ジェーンの身の上話が延々と続く展開は、なんだこれ、全然違うジャンルの映画じゃないかよ、と思わず首を傾げたほど。
もう軽く50年ぐらいのスパンでびゅんびゅん行ったり来たりしますんで、集中して見ないと筋がわからなくなる危険性はあったりするんですが、だからといって突き放してるわけでもなく、雑なわけでもない、というのがこの作品の凄さでしょうね。
高い構築性を私は感じました。
いやこれ、シナリオも撮影も編集も大変だったと思う。
オチも見事。
ああっ、そうだったのかあ、と驚かされる仰天の結末が待ち受けています。
タイムパラドックスの盲点を突いたかのようなアイデイアにはつくづく感心。
鶏が先か、卵が先か、このセリフの意味するところの皮肉な結末は、まさにSFの醍醐味を体現している、と言っていいでしょうね。
ただ私が唯一ひっかかったのは、これはいわば主人公自身の物語であって、主人公と世界を描いた物語ではない、という点。
なにか事件なり出来事なりがあって、副次的にこのストーリーが浮き上がってきた、と言うならわかるんです。
ただ自己完結しちゃってる、ともとれるんですね。
ああ、ネタバレしそうなので、もうこれ以上書けません。
原作は未読なんでどの程度改変があったのかわかりませんが、なんせ巨匠ハイラインですんで、そのあたり、手抜かりはないのでは、と思ったりもするんですが、うーん、どうなんでしょう。
まずは世界を、というのは欲張りなのかもしれませんが、もしそれがあったなら後世に名を残す傑作になったのでは、と思わなくもありません。
間違いなく相当にハイレベルな本格SFですが、複雑なストーリーを映像として形にするのに囚われすぎて、物語全体を俯瞰できなかったか、という気もします。
面白いのは確かなんですけどね。