台北ストーリー

台湾 1985
監督 エドワード・ヤン
脚本 エドワード・ヤン、ホウ・シャオシェン、チュー・ティエンウェン

台北ストーリー

幼馴染のカップル二人の、心のすれ違いを描いた大人の恋愛映画。

台湾ニューシネマの一角を担うエドワード・ヤン監督長編2作目にあたる作品ですが、私はこれまで台湾映画を一本も見たことがないので、監督の作風はおろか、ニューシネマがなんたるかも知りません。

軽く調べてみたところによると、70年代、ほぼ死に体にあった台湾映画業界に新風を吹き込むため、若手新人監督を積極的に起用し、商業ベースにとらわれない映画作りを志した運動、一連の作品群をそう呼称しているらしいんですが、長らく日本では目にする機会に恵まれなかったとのこと。

各国の映画祭で台湾ニューシネマは高く評価されたらしいんですが、商業的には失敗続きだったようで。

アーティスティックで難解なものばかり、と台湾本国ですら敬遠されていたとか。

権利関係の問題もあってDVD化が進んだのはごく最近(2017~)。

マーティン・スコセッシ率いるフィルム・ファウンデーションが一肌脱いだようです。

ほんとスコセッシは発掘してくるのが好きだなあ、ありがたいことだけど。

フランスで勃興したヌーヴェルヴァーグみたいなもの、と考えていいんじゃないでしょうか。

写実的に現実の台湾社会を反映した作品が多いようですが、言われてみれば本作もそっちの系統かな、と思います。

とはいえ、構えて見なきゃならないほど難解でも前衛でもありません。

どことなく、昔の日本映画を見ているような感じ。

私の場合、あまりにも80年代の台湾に関する知識がないんで、本作の登場人物たちが何を求めていて何に不安を感じているのか、読み取れない部分もあったりするんですが、主人公の男を古き良き台湾に生きる人達の象徴、女を変わりゆく台湾社会の象徴とするなら、作品が語らんとすることは薄っすらと見えてきたりもします。

どちらが正しいとは言えない、けれどもその接点は暫時交わりつつも少しづつ離れていき、やがて忘却の彼方へと滅する。

そう考えるならあのエンディングは必然だったな、と。

儚く、痛々しい映画ですね。

この作品を見ただけだと台湾映画界の天才と呼ばれるエドワード・ヤンの凄みはいささか伝わりにくかったりもするんですけど、なんか心に爪痕を残すものはある、そんな風には思いました。

余談ですが貞操観念の高さに少し驚いたり。

文化の違いか。

日本にある種の憧憬を抱いてる、ってのも少し驚きました。

民間レベルでも日本に好意を持ってくれてたのか、と。

中華圏の作品で、身の回りの小さな世界から社会そのものを俯瞰した映画はどこか新鮮ではありましたね。

少なくともこのあと、アン・リー監督が登場するまでマニアにしか注目されてなかった台湾映画がこうして気軽に見れるようになった、というのは喜ばしいことだと思います。

あといくつかフィルモグラフィーを追ってみたいですね。

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