神様ドォルズ

2007年初出 やまむらはじめ
小学館サンデーGX 全12巻

あ、普通にうまい、というのはありました。

ちょっと意地悪な言い方をするなら、やってることはそれこそ鉄人28号にも遡る伝統の様式で、召還獣であってジョジョみたいなもの、ってのはどうしてもあるんですけど、現実に異物を放り込む手際のよさが鮮やかだ、と感心。

都会にコケシみたいな巨大人工物が飛んできて空中戦、みたいな物語になかなか普通は感情移入出来ないと思うんですよ。

それを子供だましにならないよう、作者は上手に演出してますね。

キャラの立て方も非常に達者だと思う。

ステロタイプな人物造形が嫌味にならない、というのは相当なセンスだと思います。

とにかく女の子のキャラがみんなかわいい、というのも強み。

僻地の山村に伝わる怪しげな伝承を伝奇もの風に物語の背景としたのもよかった。

また、それを「神様ドォルズ」と名づける感覚もいい。

唯一残念なのは、それら見事なお膳立てをけん引する物語の磁力が弱い点でしょうか。

5~6巻ぐらいまでね、主人公とその仲間達が何に振り回されているのか、よくわからない、と言うのがあるんです。

アキを捕獲するためだけにここまで深刻になる理由がどうしても見えてこない。

終盤、ロストナンバーの案山子が出現してようやくストーリーが動き出すんですが、これ、あまりにも遅かった。

主人公が村に縛られる運命を、複雑な人間関係を交えて過酷に描きたいのであったなら、最初からストーリーの核となるべきものをどーん、と読者に提示するべきだったと思います。

それこそ村にとどまらず、日本と言う国が滅ぶかもしれない、ぐらい煽ったってよかったんです。

暴走する太古の兵器との戦いをBGMに、アキとキョウヘイの関係性を描けてたらもっと盛り上がったのになあ、と思います。

少し物語構成に不手際があったか、といった印象。

ああ、惜しい、と思いましたね。

高い実力のある漫画家だと思うので、次回作に期待。

足りないものは、ほんのわずかな計画性だと思うので、別の作品で是非しきりなおしを。

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