2020年初出 カネコアツシ
エンターブレインビームコミックス 全10巻

自殺からの蘇生をきっかけに、超常的な能力を持つに至った3人組を描く、和製アメコミファンタジー。
どこでもない町が舞台なんですが、当たり前にライトニングボルトなどというスーパーヒーローが存在してるあたり、その世界観はマーベルであり、DCを投影してるんだろうなと思います。
ただカネコアツシという漫画家の強い作家性が、どこかSOILやデスコの続きを読まされてるような気分にもさせてくれたり。
アメコミを上書きするとか、ほんとこの人はすごいな、と。
この手の試みは色んな漫画家が過去にやったと思うんですが、上手にやったケースを私はあまり見たことがなくて。
腕の見せ所だと思うんですが、序盤早々ハイブリットな印象を与えてる段階で凡百を引き離してるように思いましたね。
また、私が感心したのは、作者が、還暦目前にして若い子の反抗心や破壊衝動を題材として、物語づくりに取り組んでいること。
いやもう普通は描けないですよ、50代のおっさんが10代を主人公にした漫画なんて。
少年漫画誌の連載陣を見ればそれは明白。
なのにカネコアツシはこともなげにすべてをコントロール、キャラを自分の掌で躍らせるってんだから、ほんとたいしたもの。
さらにこの漫画が凄かったのは、正義と悪の対立概念にとどまることなく、世界そのものを成り立たせている不文律に疑義を申し立てたこと。
ヒーローを定義するのではなく、ヒーローをヒーローたらしめる構造に物語は真正面から突っ込んでいくんです。
終盤なんてほとんどハルマゲドンの様相ですからね。
誰がこんなところで幻魔大戦の続きをやれといった、とあたしゃついツッコみたくなったり。
主人公三人組の超常能力がなぜ発現したのかについて、きちんとその背景、要因を解き明かしていたことについても唸らされました。
煙に巻いたり、雰囲気でごまかしたりしてないんです。
観念的な部分はあるにせよ、読者の想像に任せる、みたいな感じで物語を投げ出してない。
本作、カネコアツシの到達点であり集大成だと思いましたね。
「正義がほどけていく」のセリフには鳥肌が立ちました。
ちょっと残念だったのは、作画のタッチが後半で若干変わってくること。
妙に線が細くなっちゃって。
省エネなんだか、意識的なものなんだかわかりませんが、できればいつものタッチのままで終わってほしかったところ。
あとは主人公が中学生なだけに、オッサン読者は若干面倒くさく感じる部分があるかもしれません。
好みを分けるとしたら中年世代の読み手の場合は、でしょうね。
どうあれ、大作であり傑作であることは間違いないです。
個人的にはデスコと双璧をなすクオリティだと思いますね。

