2014年初出 カネコアツシ
エンターブレインビームコミックス 全7巻

ギルドと呼ばれる謎の組織に所属する殺し屋連中の暗躍を描いたダーク・ファンタジー?
主人公は「デスこ」と名乗る子どもの殺し屋なんですが、これが恐ろしいほどの腕利きで。
大人顔負けの成功率を誇る優れた殺戮者なんですが、実は殺し以外はなにもできない社会不適合者。
普段は、かつての業界で伝説となった殺し屋、マダムMの家に居候している状態。
マダムMはデスこのことを高く評価していて「いつか私を殺してもらうために養ってる」と公言します。
さて、マダムMの言う事を額面通り受け取ってもいいのか?それともこれは物語を盛り上げるための詭弁なのか、どうあれ序盤からやたら面白かったりします。
いつものカネコアツシ、といえばそうなんですけど、真面目なのかふざけてるのかよくわからん作劇で、悪人どもがバンバンぶっ殺されていくのがなんとも楽しくてね。
しかしよくまあ、こんなイカれたキャラを思いついたもんだな、と。
殺しの仕事がない時はうつ状態で嘘ばっかりついてる殺人マシーン(子供)って、漫画はおろか映画でさえ見た記憶がない。
子どものキャラ、って匙加減が難しいですからね。
上手にやらないと、ふとした瞬間に悲惨で痛々しく映ってしまう。
そこを作者は、サブキャラの滑稽味を緩和剤として上手に回避。
少しシュールでポップアートな作画(デスこの頭の上にいつもとまってるやつとか、デスこが落ち込むと小さな雨雲が頭の上にかかるとか)もいい形でキャラの人間らしさ(生身っぽさ?)を拒絶していて、いうなればデスこ本人をアイコン化することに成功してるんですよね。
これはもうカネコアツシにしか描けない漫画だな、とつくづく思います。
どこかね、アメリカのグラフィックノベルっぽい雰囲気のある作品なんですが、他の誰がやったってこうはならない。
ま、物語そのものは作者の出世作であるBAMBI(1997~)の主人公をデスこに入れ替えて、バージョンアップしたような印象もなきにしもあらずなんですが、何もかもがBAMBIのころとは桁違いにうまくなってるんで、手垢な感触は一切なく。
なにより、あまりに鮮やかなエンディングに私は思わず声を上げてしまいましたね。
そうきたか!って。
もうこれフィル・ノワールじゃねえかよ!と。
正直、似たような結び方をした映画を見たことはある、ありますが、こういう形で最後にデスこを使うとは思ってなかったんで、まさにしてやられた気分でしたね。
カネコアツシには二作続けて消化不良を味あわされてきたんで、読後の余韻もひとしおです。
ついにやってくれた!って感じですかね、もどかしかったんだよ、ずっと私は。
現時点での作者最高傑作だと思います。
スタイリッシュでキッチュで最高に面白い一作、おすすめですね。