死刑にいたる病

2022 日本
監督 白石和彌
原作 櫛木理宇

過去に面識があったが、現在は刑務所に収監されている人物から一通の手紙を受け取り、思わぬ事件の真相を突きつけられることとなった青年を描くサイコサスペンス。

面会室を舞台としてジリジリと真実に迫っていく展開、知れば知るほど主人公青年を蝕んでいく疑念の描写、最後に待ち受けるどんでん返し等、物語は実に骨太で見応えがあったことは確か。

そこは原作の持つ力と、監督の力量の相乗効果、と言っていいと思います。

エンディングが少しやりすぎ、というか過剰かな・・と思わなくもない(ホラーみたいな後味を残しちゃうんでね)んですが、総じて質の高い一作だったといっていいでしょうね。

どう考えてもミスキャストだろ、と思った阿部サダヲも予想外にいい演技してましたしね。

監督の撮り方がうまかった、というべきなのかもしれませんが。

ちなみに中山美穂は何十年経っても毎度おさわがせします(TVドラマ:1985~)の頃のままで辟易。

陰惨な過去を持ち、現在も決して幸せとは言い切れない影のある主婦の役をあそこまで自分本位で天然に演じるとか、女優として大丈夫なのかこの人、月9じゃねえんだぞ?!と思ったんですが、まあ、そりゃいいか。

見て損はしない、と思います、損はしないと思うんですが、ただね、ぶっちゃけさせてもらうなら、シリアルキラーである榛村がいささか超人過ぎた感はありますね。

他者を手なづける、懐柔する、支配下に置くことに特化している人間が存在することは納得できるんですけど、あまりにも計画性が高すぎて「流石にそこまでコントールするのは偶発性すらも予測できないと不可能なのでは?」と思えてくるんですよね。

次々と少年少女を惨殺しながら、警察の目を欺き、泳がせるべきは泳がしておくとか、異形の天才の範疇ですら語れないような気がする。

ちょっと怪物すぎるんですよ。

終わってみれば羊たちの沈黙(1991)のレクター博士と事件を巡るシチュエーションやキャラが微妙にかぶってるのも気になった。

もう30年前の映画ですしね、気にすることはないのかもしれませんけど、似たようなことをやるならレクター博士っぽさから大きく逸脱してほしかった、ってのはある。

やっぱりね、世を欺く仮の姿だったとしてもパン屋のオヤジと博士じゃあ、キャラクターの強さが全然違うわけで。

後発の作品の方がこじんまりしててどうする、って話で。

より現実に即すなら、榛村はもう少し隙があった方がいいし、インパクトを重視するなら独自性の高いキャラ立ちをもっと考えるべき、といったところでしょうか。

あ、書き忘れてましたが、オープニングで榛村が水路に何かを撒き散らしてるシーンはなかなかよかったと思います。

なにかの花びらなのかな?と思ったんです、どこか雅やかにも感じられて。

最後に何を撒いていたのかがわかって怖気立った。

うわー・・・・こりゃうまいなあ、と感心しましたね。

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