1970年初出 松本零士
朝日ソノラマサンコミックス 全6巻
作者の偉大なるマンネリズム、四畳半シリーズの原点にあたる作品がこれ。
しかしながら原点にしてストーリーもシナリオ構成もあったもんじゃなし。
職なし金なし彼女なしの短足眼鏡の貧乏人、大山昇太のデタラメで無軌道な4畳半アパート暮らしを必殺のワンパターンでコメディタッチに描く。
とにかく本作、最初から最後まで一切何も変化しません。
しょっちゅう仕事をクビになって食うものにも困る有様の主人公と、向かいの部屋に住むヤー公ジュリーと情婦のジュンとのドタバタ酒池肉林だけで延々6巻。
各話の起承転結はほとんど変わらず。
吉本新喜劇並の予定調和と言っていいと思うんですが、これがわかっていても何故か楽しいんですね。
「男おいどん」には欠落していた、奔放な性のばかばかしい演出と、どんなに悲惨でもそれをものともしないデタラメさがあるからだと思うんですが、やっぱりこういう生活はこういう生活なりに楽しいのではなかろうか、と思わせるなにかがあるんですね。
作者の同傾向の作品は他にもたくさんあるんですが、本作が最高傑作だと私は思います。
薄汚くてどうしようもないんですが、そこに妙にシンパシーを感じてしまうのは一人暮らしを経験した人なら分かってもらえるのでは。
松本零士ならではの独特なペーソスも過剰になりすぎず、いい按配で私は好きですね。
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