イギリス 2001
監督、脚本 クリストファー・ノーラン
モノクロで決して派手なわけでも突飛なわけでもないのに、見始めて10分程度で、ああ、これはおもしろい、と前のめりになりました。
作家志望の男が、興味本位で他人を尾行する趣味にふとしたきっかけで協力者を得て、非合法に泥沼化してしまうサスペンスなんですが、とても長編デビュー作とは思えぬシナリオ構成の緻密さ、テクニックに舌を巻きました。
感心したのは不穏さを漂わせたまま一切緊張感が途切れぬこと。
ストーリーが時系列どおりに進んでいかないややこしい作品なのに、このテンションは何事か、と私は思いましたね。
普通は集中力がそがれそうなもんなんですが、それにも増して物語の全体像が少しづつ明確になってくる快楽の方が勝る。
さらに驚かされたのは、なぜ時系列がバラバラになっているのか、ちゃんとその理由が終盤明らかになっていること。
いやもう、並の力量じゃありません。
発想が違うし、それを形にする計画性、全体をコントロールする統率力がぬきんでています。
コップ、頭良すぎるだろ、と思わなくもないんですが、オチも秀逸。
建築士が自分で描いた図面を持って現場に出かけ、自分の手で材料を吟味し、工具を握り、一軒丸ごと家を建てちゃった、みたいな作品。
もちろん玄関の向こう側は迷宮。
いやこりゃ傑作でしょう。
後の成功も納得です。