1980~85年初出 佐藤史生
早川書房

<収録短編>
阿呆船
馬祠祭
天界の城
羅陵王
やどり木
昔、新書館から「阿呆船」のタイトルで単行本が発売になってたと思うんですが、収録作品に違いがあるのかどうかまではわからず。
ワンゼロや夢見る惑星のすごさが年月を経ても全く色褪せない作者ですが、実は短編を読むのは今回が初めてでして。
まあ、駄目な訳がないとタカをくくってたんですけど、駄目どころか強烈過ぎて、最近の漫画って劣化してきてないか?とまで思った次第。
突出してるのはやはり「阿呆船」「羅陵王」「やどり木」でしょうか。
ま、全部すごいんですけどね。
とりあえず最近のわかりやすい漫画で飼いならされた目線で読むと、最初からわけわかんないです。
馴染みのない造語はバンバンでてくるわ、余計な説明は一切されないわ、で。
想像力を試されることは確か。
ガチでSFです。
脳が老化してると多分ついていけない。
順調に老化してる私は何度も繰り返し読んでやっと理解できたほどでして。
多分、10年後にもう一度読んだらもう内容理解できないと思う。
おそらく最初の3編は、遠い未来の混沌期を生き延びた人類の至福千年期を舞台に描かれたものだと思うんですが、はるか遠い旅を経て帰着した宇宙船にうつぼ船の伝承を重ね合わせる、なんて諸星大二郎でもやってないわけでね。
「羅陵王」における不老長寿の妙薬アムリタの真実を描いた物語の着地点もお見事の一言。
時の果ての漆黒の慰安、なんて言われたら鳥肌でしかない。
女流SF漫画家不動の天才、萩尾望都とも肩を並べる完成度だと思いますね。
こと漫画に関して言うなら、SFは70~80年代の女性の方がすごいものを描いてる、と改めて感じました。
脳が柔軟なうちにぜひ手にとって欲しい1冊ですね。