マンホール

2004年初出 筒井哲也
スクエアエニックスヤングガンガンコミックス 全3巻

初めて読んだ時、本当にびっくりしました。

いやこれ、メジャー級の実力者で完成度じゃねえかよ、って。

なんでここまでデキる人がヤングガンガンなんかで連載してるの?業界トップの青年誌(当時)ヤンマガの看板漫画でも全然おかしくねえじゃん、と。

いや、ヤングガンガンを卑下してるわけじゃないんですけど、どうしたってファンタジー主軸のビデオゲーム人気にあやかってる漫画誌、というイメージがあったものですから。

どう考えても未知の寄生虫を題材にした社会派サスペンスが生まれるような素地はない。

なんだこの突然変異は、ヤングガンガンまでチェックしきれねえよ!と焦ったものですが、調べてみたらウェブサイトで公開していた自身の漫画が評判になって人気に火がついたよう。

そりゃそうだろうなあ、あれから20年近くが経過してるけど、筒井哲也みたいな漫画家は1人もヤングガンガンから登場してないもんなあ。

ま、早い話が「最初から凄かった」ってわけですね。

デビューは月刊少年ジャンプだったみたいですが、集英社の編集部はさぞかし焦ったことでしょうね。

まさかスクエアエニックスにかっさらわれるとは!みたいな。

結局今はヤンジャンを主戦場にしてるわけですから、一安心でしょうけど。

とりあえず、作者についてはっきり断言できるのは「地力が違う」ってことでしょうか。

正直ね、未知の寄生虫の存在を含めて物語にそれほど目新しさはないんですけど、緻密な構成と演出、キャラ立てのうまさ、ドラマ作りの巧みさ、画力の高さがもう円熟の売れっ子漫画家クラスなんですよね。

どことなく既視感を感じるな、と思いつつ読んでいても、いつの間にか惹き込まれてる自分がいる。

どっちかというと変化球やクセ球が好みな私ですが、寄生虫などというグロいネタを扱いながらもここまで見事に剛速球を決められると揚げ足取りたくても取れるもんじゃない。

漫画界屈指の実力派と言っていいと思います。

長期連載が可能なら青年誌の天下をとれたでしょうね。

こういう漫画家こそがメインストリームで漫画文化をひっぱっていってもらいたいもので。

そりゃ売れなきゃ嘘だわ、と思った一作。

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