シュマリ

1974年初出 手塚治虫

明治維新直後の北海道を舞台に、未開の荒野と悪戦苦闘しながら生き抜こうとする主人公シュマリの活躍を描いた歴史大作。

最初のプロットは侵略されるアイヌ人部落と内地人の紛争をシュマリを通して描く、みたいな感じだったらしいのですが、あちこちからクレームがきたらしく、アイヌ民族の悲劇についてはほとんどといっていいほど描写されていません。

物語はシュマリという型破りな風来坊が頑固一徹に過酷な風土や体制の迫害に立ち向かう展開に終始。

なんとなく一連の本宮ひろ志や小池一夫のマンガ風ではあります。

先生がその手の劇画を意識されたのかどうか分かりませんが、広げられた風呂敷の大きさの割にはテーマ性は希薄。

方向転換を余儀なくされた末のストーリーテリングなのだと思いますが、方向転換した結果ですらこれだけのものが描けるのか、という感嘆と、本来のプロットどおりのものが読みたかった、という失望感が半々、といったところでしょうか。

シュマリの豪放磊落な生き様はどこかマッチョイズムな感じで、それ故時代を反映して一定の層にはとっつきやすい作品だと思いますが、あまりにヒロインのお峯さんがかわいそう、という気がしなくもありません。

人気の高い一作ですが、個人的にはらしくない、といった印象もあり。

いつの時代も覚悟のない出版社が作家の足枷になるのかもなあ、と思ったりもしました。

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