1975年初出 手塚治虫
2.26事件で近代史に名高い北一輝を多面的に描こうとした歴史ドラマ。
残念ながら未完。
連載していた雑誌の編集方針が変わったため連載が続けられなくなったらしいんですが、そりゃ漫画サンデーでこの内容はなあ、と思わなくもないです。
75年以前の漫画サンデーがどんな雑誌だったのか、詳しくはしらないんですが、大人のためのお色気、ナンセンス漫画と軽い読物でご機嫌を伺う、って印象でしたし。
物語は1900年の中国から始まり、主人公の北一輝が登場するのは後半から、というスロースタートな内容となっており、狂言回し的な存在の三娘の活躍が前半のほぼ全部を占めています。
しかし手塚先生はちょっと頭の弱い不細工な女を魅力的に描くのがうまいなあ、と思う。
別に北一輝が登場しなくとも動乱の時代に運命を翻弄される三娘の生き様を描くだけで充分ドラマとして成立するように私は感じました。
三娘のその後が読めない、ってのがはがゆい。
シリアスな内容なのに、どこかコメディタッチ、と言うのがおもしろい、と思います。
先生にしてはらしくない冒険を兼ねた作品だ、と思えるだけに終わらなかったのは残念。