三つ目がとおる

1974年初出 手塚治虫

やや荒唐無稽でこじつけと思えるような謎解きもあり、漫画ならではの適当さが危うかったりもするんですが、それでも普通以上におもしろいんだからさすが先生としか言いようがない1作。

あまり自信はないんですが、漫画における伝奇ミステリ、伝奇ファンタジーとしてはその先駆け、と呼んでもいいのが本作ではないでしょうか。

特筆すべきはやはりキャラ設定の見事さ、だと思うんです。

主人公写楽が、実は高い知能をもち超常能力を使うにもかかわらず、バンソーコ一枚でその能力を左右されてしまう、ってのが最高に良くできてると思うし、母性豊かな和登さんとのコンビで古代文明の謎に挑む、という展開も、シャーロックホームズのもじりながらそれを意識させないほど独自性に溢れていると思います。

少年の頃、いったい何度繰り返し読んだかわからない。

さらにはストーリーに知的好奇心をゆさぶる巧みさがあるんですよね。

何故か当時読んだ講談社マガジンKC版は6巻までしか発売されておらず、どうして続きが出ないのか少年心にやきもきしたものですが、結局そのまま続巻は発売されず。

後に発売になった全集ではすべての原稿が収録されたのですが、これがものの見事に未発表原稿はさっぱりおもしろくなく、ああ、先生が単行本化を許可しなかったのだな、と推察。

なので初めて読む人は全集の1巻から読むと「え?こんなもの?」と肩すかしを食らうおそれがあるので注意。

初読の方は雑誌発表順に収録されている単行本で読むことをオススメします。

多分、全然評価が変わってきます。

私の評価は一番最初に単行本化された6冊に対するものではありますが、先生の数ある代表作のうちのひとつであり、間違いなく後世に残すべき傑作なのは確かだと思います。

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