ラビング 愛という名前のふたり

ラビング 愛という名前のふたり

アメリカ 2016
監督、脚本 ジェフ・ニコルズ

黒人と白人の間での結婚が法律で禁じられていた1950~60年代のバージニア州を舞台に、法を犯すことになろうとも添い遂げようとした一組の夫婦を描く実話もの。

ああ、人種間の溝というか軋轢ってのは本当に根深いものがあるのだなあ、とつくづく思いましたね。

特にアメリカには奴隷制度がありましたから、それが顕著なんでしょうけど、法律で定めてしまう、って了見がね、現代的感覚から推し量るなら正気か、って感じですよね。

主人公夫妻、法を犯した、ってことで物語序盤に収監されてしまうんですが、その時、刑務官が真顔で夫に言い放つんです。

黒人と白人の血を混ぜ合わせることは神の定めた自然の摂理に反する行為だ、と。

宗教的な寓意を含んでるわけじゃないんです。

本気でそう思ってるんです、刑務官は。

あたかも男が猿やイノシシと結婚しようとしてる頭おかしいやつ、みたいな感覚なんですね。

閉塞的で不寛容な社会だとか、暗い未来しか見えてこないとか、現代を良く言うひとはあんまりいないですけど、こういう映画を見てるとね、それでも今の社会は素晴らしく自由だと思ったりしますね。

先人たちの苦闘の歴史、やっとの思いでつかみとった権利を礎として我々は生かされてる、とつくづく感じます。

物語に大きな山場や劇的な展開はほぼありません。

夫婦が求めるのは、普通の生活を普通の人たちのように故郷で送ること、その1点のみ。

決して裕福なわけでも、コネがあるわけでもないから、戦う手段を持たないし、どう戦えば突破口を見出すことができるのかも彼らはよくわからない。

司法の目から隠れるように田舎に移り住み、何年もの歳月が密やかに流れていく。

彼らを救ったのは一通の手紙が招いたほんの小さな偶然なんですけど、作為的な演出、映画ならではの誇張がないんで、ああ現実ってこんなものなのかもしれないなあ、と逆に思ったり。

監督のジェフ・ニコルズは事実に忠実であることに徹したらしいですが、それが功を奏してる、と言えるかもしれません。

ただ、ハリウッドの感動路線にすっかり慣れ親しんでる人からすれば、淡々としすぎてて退屈、と映るかも。

そのあたり、難しいところですね。

個人的にはちょっと長すぎたかな、というのはありました。

決してテンポの良い123分というわけじゃないんで、賛否は分かれるかもしれません。

ま、私は監督のファンなんで、彼のじっくりとストーリーを紡いでいく手口は歓迎ではあるんですが。

ニコルズの作品にはよく顔を出してるジョエル・エドガートンが素晴らしい演技を披露してます。

おなじみマイケル・シャノンもこっそり出てたりする。

日本人にはあまり馴染みのない、知られざる黒人迫害の歴史を知る上では興味深い一作と言えるんじゃないでしょうか。

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