イタリア 2016
監督、原案 パオロ・ジェノベーゼ

ホームパーティに集まった7人が、ちょっとした意地の張り合いから自分たちのスマホを一斉にテーブルに差し出し、着信やメールを見せ合う羽目になる様子を描いたブラック・コメディ。
しかしまあ、バカなことをするもんだなあ、と。
スマホなんてなにが出てくるかわからんブラックボックスだというのに、それを仲間内で共有するだなんてどう考えても正気の沙汰じゃないですよね。
しかも7人の内、6人は夫婦なんです。
こんなの、もめないわけがない。
アメリカじゃあ恋人が相手のスマホをチェックするのは当たり前らしいですが、少なくとも日本やヨーロッパ圏じゃあそんなオープンな気風はないでしょうしね、聞こえてくるのは破滅への足音でしかないですよね。
案の定、次から次へと誤解を招く電話やメールがそれぞれのスマホに届いて、場は紛糾。
楽しいはずのパーティが阿鼻叫喚の地獄絵図に。
ああ、あるわ、こういう誤解のされ方、と納得できる災難もあれば、完全にこいつはクロ、と思えるものもあり、ほんと熟年夫婦ってのはどうしようもない、と呆れるやら解せるやらで。
ま、ストーリーテリングは実に巧みだった 、と言えるかもしれませんね。
完全な密室劇なのにも関わらず、色んな嘘やごまかしが次々と暴かれていく展開、テンポよく進む会話の妙に、最後まで全く飽きることがない。
というかシンプルに怖いですしね、スリリングすぎて。
特に一定の年齢以上の酸いも甘いも噛み分けた中年世代の方々は、背筋が寒くなるものがあるのでは。
そりゃもうね、半端なホラー以上に手に汗握りますって。
私が男性なせいもあるんでしょうけどね、ほんと、揃いも揃ってどの嫁も気が強くて。
いいから早く土下座して許しを乞え!と思わず画面に向かってつっこんだりすることもしばしば。
ただ、物語のプロットそのものを振り返るならね、これだけ秘密を隠し持った連中がスマホの見せあいなんてまかり間違ってもやるわけないだろう、という逆説はどうしたって成り立つわけで。
そこに納得できるリアリズムはないですよね。
なので、もしこんな事が現実に起きたなら・・・と言った仮定に基づくワン・シチュエーション・ドラマ、というのが正しい解釈になるのでは、と思ったりもします。
唯一残念だったのはエンディングですかね。
ちょっとわかりづらい。
えっ、これはある種のゲームだったの?と解釈すべきなのか、それとも夫婦のしぶとさみたいなものを強調してるのか、私には判別つかなかった。
もう少しスコンと突き抜けたラストシーンがあれば、密室劇の傑作、と賞賛することもさぶさかではなかったんですが、どことなく広げた風呂敷を畳みきれてない印象は残りましたね。
退屈しない一作ではありますが、あともう一歩、といったところでしょうか。
ひとつだけ言えるのは、夫婦やカップルで見ないほうがいい、ってこと。
間違いなくお互いに対して疑心暗鬼になります。