墓標の町

1993~94初出 伊藤潤二
朝日ソノラマハロウィン少女コミック館

<収録短編>
肉色の怪
墓標の町
許し
アイスクリームバス

なんといっても出色なのはやはり表題作「墓標の町」。

息を引き取った人がその場で石柱化を始め、やがては完全な墓標となる町での怪異を描いた一遍なんですが、もちろんそんな町なんてあろうはずがないですし、人が石柱化なんてするわけがないのはわかりきってるはずのに、読み進める内にどこか辺境の村にそんな場所が実在するのでは、って気持ちになってくるのが伊藤潤二の凄さというか類まれなる迫真性というか。

もうほとんどSFな気もしなくはないんですが、奇怪すぎてSFと言い切るのもはばかれる感じですね。

まさに作者ならではの世界観であり忌まわしさ。

またルール作りがうまいんです。

死者を動かしてはならない、としたことがおぞましさ満点のドラマを産んでる。

墓標が所構わず点在する町の絵ヅラといい、異郷をこの世に現出させた傑作でしょうね。

「肉色の怪」はどことなく楳図かずお風。

楳図さんが好んで題材にしそうなテーマですが、どこかバカバカしい感触もあるのが作者らしさか。

「アイスクリームバス」「許し」はまあ、可もなく不可もなく、ですかね。

墓標の町を読むためだけに買って損はない一冊、といったところでしょうか。

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