瀕死のエッセイスト

1993年初出 しりあがり寿
ソフトマジックレヴォルトコミック

「死」をテーマに、明日をもしれぬ病人を狂言回しとして、幻覚的でシュールな物語を綴った連作。

死を考えることで生き様を問う、みたいな感じのことがやりたかったのかな?と思うんですけど、どうしようもなく暗いのがやはり難点かと。

笑いに色気を見せてる回もあるんですけどね、すべて作者が自分で意気の芽をつんでいくんですよね。

かといってホラーはだしな恐怖に彩られてるわけでもない。

横たわってるのは、寂寥感やけだるさ、あきらめや倦怠といった寄る辺なき負の感情ばかり。

ま、死がテーマですから暗いのは当たり前、といえば当たり前なんですけど、それにしたってこりゃ商業誌泣かせで陰鬱だな、と。

雑誌に連載されてたものなのか、描き下ろしなのかすら知らないですけどね。

とりあえず、たいしたオチなしヤマもなしでエンターティメント性は相当に虚弱ですね。

かといって、読者無視で本当にやりたいことだけをやった、ってわけでもなさそうなのが始末に悪い。

なにぶん、真夜中の弥次さん喜多さん(1994~)を読んだあとでこの本を手にしたものだから、物足りなさはどうしたって感じてしまいますね。

生や死を超越したデタラメの先に見えてくるものを形にするのがしりあがり寿じゃなかったのか、と。

結局、地味ってことなのかもしれません。

シンクロする人はめちゃくちゃシンクロしそうな内容ですけどね。

私は想像力の地平を見せつけてくれることをこの頃の作者には期待してたんで、肩透かしをくらった気分になりました。

死を弄ぶ皮肉なユーモアは悪くない、と思うんですけどね。

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