座敷女

1993年初出 望月峯太郎
講談社ヤンマガKC

リング(1998)以降のJホラーブームをあたかも先取りしたかのような傑作ホラーだと思います。

まだストーカーという言葉すら一般的でなかった頃に、こういうものを形にしてしまう先見性がとんでもない。

私の場合、世代的に怖い女といえば貞子ではなく、コチラ。

映画も含めて多くのホラーが提供する恐怖の対象といえば、座敷女以前はそのほとんどが男性であり、居てもせいぜい魔女であり、一般社会に住まう女性の「性」に根ざした粘着質な怖さを古典的な怪談噺と違うベクトルで描いたのはこの漫画が嚆矢だった気がしますね。

同じく女性を主人公にしたホラーを多く描いてきた恐怖漫画の第一人者、楳図かずおとの最大の違いは、襲い来る恐怖に「なんら因果関係が存在しないこと」にあるように思います。

ただただ理不尽で不条理なんですよね。

けれど女の側には道理がある。

この永遠に埋まらぬ「溝」の得体のしれなさはなんなんだと。

それこそが実は男と女なのか?と。

わかりませんけどね。

もう、ほとんどタタリ神レベル。

その異形性も含めて当時は本当に怖い、と思いましたね。

また、興味深いのは、バタアシ金魚(1985)の主人公であるカオルを別の視点から俯瞰すればこうなるんじゃないか?と思える節があること。

笑いと恐怖は表裏一体。

望月峯太郎は陰と陽の作品を描き分ける漫画家だと思うんですが、ホラーにおいても一流であることを証明した一作でしょうね。

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