アメリカ 2016
監督、脚本 アンディ・ミットン
父親の早逝が原因で死の恐怖に囚われた男が、死後の世界を探るべく「その存在を証明してくれた人に賞金を出す」と新聞広告をうつ序盤の立ち上がりはなかなか面白かったように思うんです。
最終的に応募者を3人に絞り、順番に話を聞いていく、という展開もどこかアカデミックでいい。
何故かその現場に主人公のオカンが必ずくっついてくるのも巧みな作劇だと思った。
普通は恋人とか友人ですよね、協力者は。
それをあえてオカンにしたことで、母親との関係が成人しても変わらない主人公の内にこもる性格、マザコン気味な体質が語らずとも伝わってくるし、なにより母の存在そのものが暗鬱なホラーの緩衝材、軽いくすぐりになってて気疲れしないんです。
決してコメディってわけじゃないんですが、オカン、でしゃばりすぎ!とつっこめてしまうのがいい意味でオカルトに明るい色調を加えてる、というか。
中盤ぐらいまでの流れは緊張と緩和のバランスに長じた妙味ある内容だったように思います。
不気味なんだけど、どこかホラーらしくないのが不思議と好感触で。
で、よろしくないのは後半。
ある事件をきっかけに、主人公は手酷い霊障に見舞われるんですが、そこから完全に物語は「幽霊もの」に方向性をシフトチェンジしちゃうんですよね。
いや、ちょっと待て、死後の世界の証明はどうなったんだ、と。
なんかに取り憑かれたみたいだから「もう証明できました」ってこと?と頭の中を飛び交うハテナマーク。
ブレた、その一言ですね。
あたしゃてっきりまだ見ぬあの世を監督なりの創造性と世界観でもって見せつけてくれるものだと信じ切ってたんですが、幽霊がいる=あの世あり、で論証終了、とどうやら本人は納得してるっぽい。
いや、違うだろう、と。
それって、うまいラーメンを作る人を知ってて、ラーメンそのものは食ったことあるんだけど、料理人がどこの店で働いてて、いつ開いてるのかは知らない、って言ってるのと同じようなものだと私は思うわけです。
こういうのを意味のない情報、と一般的にはいう。
幽霊を祓うためにはどうするべきなのか、なんて知りたかったわけじゃなくて。
前半のケレン味を理詰めで粉砕していく構成はいったいなんだったのか、と。
一応、エンディングでは予想外のショッキングなオチが待ち受けてたりするんですが、一回スカされた後でひねりを加えられてもですね「ほんとはこっちの手品を見てもらうのが今回のショーのメインだったんです」って後付けで言ってるようなものであって。
うーん、散漫。
切り口や設定は良かったんですが、完全に途中で道を間違えて違う目的地に着いちゃったのにゴールした!と得意満面になってるような映画でしたね。
いい脚本家がいれば化けるような気がしなくもないんですが・・・。
残念。