セブン・シスターズ

イギリス/アメリカ/フランス/ベルギー 2016
監督 トミー・ウィルコラ
脚本 マックス・ボトキン、ケリー・ウィリアムソン

セブン・シスターズ

人口爆発による食糧危機を迎えた2073年の欧州を舞台に、一人っ子政策が施行された管理社会を描くディストピアSF。

元ネタになってるのは2015年に廃止された中国の悪法なんだろうなあ、ってのは火を見るより明らかなわけですが、この作品が愚拙なのは現実社会で失策だったと広く認知されているような人口抑制策をわざわざ物語の柱として、未来の物語に仕立て上げてることでしょうね。

アイディア、想像力に乏しいことは言うまでもないんですが、それ以前の問題として「未来の欧州の人間はアホなのか?歴史を知らんのか?」というツッコミが簡単に成り立つことをなんで制作陣は気づかないんだろう、と私は真剣に思ったりします。

物語の筋立てに中国への皮肉や非難が含まれてる、ってわけでもないですし。

単に七つ子で生まれたカレン・セットマンの悲運な境遇をもり立てるための装置でしかないんですね、プロットそのものが。

なので、まず前提として、本格SFだと思って対処しちゃいけない、ってのはある。

どちらかというとファンタジー。

そう考えて見ると、前半はまあ、それなりに楽しめなくはない。

月曜から日曜までの名をふられた少女たちが、監視の目をかいくぐり一人のカレン・セットマンを演じ続けるドラマ、というのはシチュエーションのみに着目するならなかなかスリリングだった、と思います。

1人7役のノオミ・ラパスも7人のキャラを頑張って演じ分けてましたし。

ただね、ラパスの頑張りとは裏腹に、監督自身が7人のカレンを上手にコントロールできてない、というのがあって。

さばききれてないんですよね、7役を。

それは後半の展開でさらに顕著になる傾向にあって。

結構、悲惨な運命が姉妹を待ち受けてるんですが、最初から手綱を握る手が緩んでるものだから、物語の佳境においてすらそれを痛々しいと観客に感じさせることが全く出来てないんです。

演技指導も含め、演出が話にならない、というのも大きいでしょうね。

作劇のルーズさ、台詞回しのセンスの無さも気になった。

映像を合成する際の姉妹の立ち位置も微妙に変だと思いましたし。

早い話がグダグダ。

終わってみれば、ノオミ・ラパスが7役やってますよ、という話題性だけの映画だったなあ、と。

ウィレム・デフォーが画面に登場している間はそんなに悪くないかも、盛り返してくるかも、と思ったりもしたんですが、ふと気がついたら恐ろしい落差ですっ転んで低空飛行のままエンディング、でしたね。

割と金のかかったB級、その一言。

もうちょっとがんばろう、いや、マジで。

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