2016年初出 永井義男/松本次郎
リイド社 全7巻

幕末の混乱期に、勝海舟の画策によって、あえて農民だけで組織された「一撃必殺隊」の活躍を描いた時代劇。
あの松本次郎が時代劇?と当時は驚きましたね。
どっちかというとSF寄りでアングラな作品ばかり描いてた人が、いったいどういう風の吹き回しなんだ?と訝しんだりもしたんですが、手に取ってみたらこれが意外に面白い。
作者の作風が、私の想像よりも時代劇に馴染んでるのが思わぬ発見だったりもして。
そうか、松本次郎のあけすけで露骨で遠慮呵責ない作劇は、残酷さ、悲惨さを避けて通れぬ時代劇でこそ活きるのか!と変に納得したり。
あえて原作ものに挑戦したのも功を奏していたように思います。
作者最大の難点はシナリオが弱いことにあると私は思ってて。
キャラ作りは上手なのに、これこそ代表作!と言えるものが過去に見当たらない気がするんですよね。
どれもかゆいところに手が届いてないというか(異論は認めます)。
なんだろ、そもそも資質の問題で緻密なライティングができないのか、性格的に集中力がなくて雑なのか、そのあたりはよくわかんないんですけど、驚きの伏線とか隠された布石とか彼の作品で見かけた記憶がほぼない。
松本零士的行き当たりばったりに近いものがあるような。
ま、早い話がどこか安定してないんですよね、これだけのキャリアを重ねていながら。
それこそが作者のオリジナリティーだ、という人もいるかも知れませんが。
ところが今回に限っては「こんなことやってちゃんとあとから回収できるのか?」といった不安がまったくない。
踏み外すことなく、ゴールに向かってきちんとルートを進んでる感じ。
これはもちろん永井義男の力量なんでしょうけど、長年の松本次郎ファンからしてみたらようやく一皮むけたように映るというか。
安心して読んでられるんですよね。
もともと作画力は高い人だから、シナリオさえちゃんとしてたら鬼に金棒。
農民が武士の身分を餌に、暗殺部隊として剣技を仕込まれるストーリーも斬新でいい。
畑仕事で鍛えた体力自慢の百姓がプロから武技を仕込まれたら、本物の剣客相手であってさえ勝つことができるのか?なんて誰も物語にしてないと思うんですよね(少なくとも漫画では)。
薩摩藩士にテロを仕掛ける場面とか読んでて普通にテンション上昇。
そりゃ映画化の企画も進行するわ、と納得(頓挫したみたいだけど)。
こんなの実写でやったら絶対盛り上がるに決まってますし。
惜しむらくは、肝心のエンディングがどこかカタルシスを得にくい感じで結ばれてしまってること。
主人公丑五郎が最後に敵対すべきは、やはり幕閣を後ろ盾に表へと出てこない存在であるべきだった、と思うんです。
自分たちを弄んだ黒幕に、勝てないまでも一刃くらわせてこそ溜飲もさがる、というもの。
薩摩藩士の伊牟田相手では、勝っても負けてもお互いつらいだけですから。
あとに何も残らないんですよね、虚無感漂うだけで。
で、物語も結局そこからどこへ行くわけでもなく、なんとなく尻すぼみに終幕。
もったいない、その一言につきますね。
6巻まではめちゃくちゃ面白かったんですけどね、最後の最後に「そっちじゃない」方向にいっちゃった、というか。
ま、これはこれで「ままならぬ不器用な連中の悲哀」を描いてる、ってことでいいのかもしれませんけどね。
世間の評価は概ね高いみたいなんで、私が求めてるものがひょっとしたらズレてるのかもしれません。
しかしながらまたもや松本次郎、うーん、かゆいところに手が・・・というのが偽らざる気持ちだったりはします。

