星のポン子と豆腐屋れい子

2013年初出 小原愼司/トニーたけざき
講談社アフタヌーンKC

流行らない豆腐屋一家にやってきた宇宙人ポン子と姉弟のドタバタを描いたSFコメディ。

いやもうね、この単行本が発売された時はどういう奇跡か、とマジでぶったまげましたね。

岸和田博士の科学的愛情(1991~)以来、さっぱり新作を手掛けてくれない(ピンチーとかガンダム漫画とかあったけどさ)トニーたけざきの漫画が読める、ってだけで小躍りした私なわけですが、原作が小原愼司ってのも、いうなればゲイリー・オールドマンとマッツ・ミケルセンがバディ役で共演するようなもの(私一人がわくわくする例えですまぬ)、通が大喜びする組み合わせだったりしますから。

仕掛けたのはアフタヌーン編集部だと思うんですが、ほんとよくわかってる、小原✕たけざきの組み合わせとか、漫画好きじゃなきゃ思いつかないですよ。

とにかくもう色々懐かしくてね、全然衰えてないじゃないか、トニー!と、第一話を読んだだけで傑作!100点満点!と思わずほざいてしまいそうになったりしましたが、驚くべきことに、読了後も「さすがに100点満点とはいかないが、これ、企画モノとは思えぬ高水準な内容ではないか?」と思えたのが嬉しい現実でね。

ちゃんと二人の美点や特質が噛み合ってるんですよね。

やはり小原愼司が辣腕だったのは、一見、藤子不二雄が得意とする「日常に異物を放り込んでドタバタ」なコメディ、と思わせておきながら、進行に色んな裏切りがあり、エンディングにおいてもわかりやすいハッピーエンドで落とさなかったこと。

ちょっぴりビターなんですよね。

それでいて「必ずしも絶望的な訳では無い」と締めたのが見事としか言いようがなくて。

で、そんな物語にトニーたけざきのコミカルな作劇、シリアスな演出がいい按配に噛み合っており。

単行本1冊分の短さだからこそ結実したのかもしれませんが、こういう作品こそを良質なSF(少し不思議)というんだよ、となにやら誇らしい気持ち(なんでだ?)になったり。

普段、バトル漫画ばっかり読んでる少年読者に手にとってほしい、と思ったりしましたね。

少年向き、ってわけじゃないんですけどね、これは若いうちに読んでおくべき、と思いました。

従来のファンのみならず、幅広い層にアピールする一作だと思います。

あー、この手の企画モノでいいから、またトニーたけざき、ストーリー漫画描いてくれないものか・・・と思いつつ、気づけば10年以上たってるなあ・・・。

小原愼司も商業誌から消えてしまったし。

この一冊の価値を語れる人間が、どんどん居なくなっていくであろうことが悲しい限りです。

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