地獄の教頭

2014年初出 大沼良太
スクエア・エニックスヤングガンガンコミックス 1~6巻(以降続巻?)

自分の信じる教育のためにはあらゆる手段を尽くす教頭先生、近衛修文の、狂気な指導を描いた異色の学園ドラマ。

独特なプロットであったことは確かだと思うんです。

普通、学園ドラマで教頭先生になんて注目しないし、また、その人の教育方針を掘り下げようと考えることもないでしょうし。

ましてや教頭先生が、生徒を矯正、更生させるためなら非合法な手段や暴力も一切躊躇しないとか、どういう発想なんだよ、って話ですし。

なんせこの教頭、平気で教え子を監禁したり、時にはヤクザと取引したりと、お前はダークサイドの人間なのか?と勘ぐってしまうほどに闇が深い。

言うなれば裏金八先生

金八先生は性善説を信じ、辛抱強い語りかけと話し合いで生徒と向き合いましたが、近衛教頭は前提として「言葉でどうにもならない人間は一定数存在する」と達観していて、簡単にコンプラとか常識をすっ飛ばして実力行使に及ぶ。

いやもう、めちゃくちゃやがな、と思うんですよ、思うんですけどね、モンスターペアレントに代表される「自分の優位をかさにきて増長するバカ」とか、正直ぶん殴らねえとわかんねえよな、とみんな多少なりとも思ってるはずで、そんな思いを代弁、具象化している爽快感は間違いなくあるんですよね、この漫画。

最終的に教頭はどこへ向かっているのか?またその出自や背景はどうなっているのか?等、色々と謎な部分が多いんで、うかつに共感できない怖さはあるんですが、仕置人的アンチヒーローな立ち位置に目が離せない面白さがあるのは確かです。

ただ、残念ながらこの作品、現在連載中断中。

5巻が発売になったあと、一度中断して、2022年に再開、やがて6巻が発売になったんですが、その後再び中断。

勝手な想像ですけどね、再開はもうない気がします。

作者のモチベーションの問題なのか、それとも健康問題なのか、なにも明かされてない時点で怪しい、と思いますし。

教育なのか洗脳なのかわからん悪夢の指導を描いた漫画として、どう完結させるかこそが大事だったと思うんですが、現状、物語を閉じる気配もないまま中断なんで、評価のしようがなし。

他にこういうタイプの作品が見当たらないだけに、もったいないなあ、と思いますね。

いつの日か、奇跡的に連載再開されたらまたなにか書けることがあるやもしれません。

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