監督、脚本 ケヴィン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー
リメイク版ペット・セメタリーを手掛けることが発表されたケヴィン・コルシュ&デニス・ウィドマイヤー監督の劇場長編デビュー作(多分)。
女優を夢見るも、チャンスに恵まれず一向に認められない女が、あるオーディションを通じてその身に起こった奇怪な変化を描くホラー。
まず言っておきたいのは、どう贔屓目に見積もっても主人公の女、少女じゃねえだろ、って事。
何を考えてこんな副題をつけたのかわかりませんが、普通に大人の女です。
多分20代前半ぐらいだろうと思う。
なので「少女」はどこを見渡しても「覚醒」なんざしてません。
キャリー(1976)とか、最近の作品で言うならRAW/少女のめざめ(2016)とか、あのあたりとは肌合いを異にしますね。
どっちかと言うとバカ女がまんまと騙されて大変なことになっちゃった、みたいな感じの内容。
結果的に騙されたことを肯定というか、ま、これはこれでいいんじゃない?みたいな感じで主人公が受け止めてるんで、それが恐怖につながってる、という仕組みですね。
とりあえず、あんまり共感できないです。
いいからお前はもう少し己を知れ、とつっこみたくなること数度。
下積みなしに一足飛びでスターになれるとでも思ってるのか、それほどの器かコラ!とイライラしてくる。
あえてそう印象づけたのかもしれないですけどね。
そういう人間だからこそ、こんな罠にはまるのだ、みたいな。
ただねえ、主人公の女を嵌めた連中の意図というか、目論見みたいなものがあまりにも曖昧でぼんやりしててですね、なんだかスッキリしない、というのが本作の最大の難点でして。
大体の予想はつきますよ。
予想はつくけど、観客に丸投げしていい部分とそうじゃない部分ってのがあると私は思うんですよ。
おそらく監督は絵で全部説明したつもりなんでしょう。
確かに絵にインパクトはあった。
ひさしぶりにオーメン(1976)のような忌まわしさを物語から感じたりもした。
でも、それだけ。
終わってみれば「だからなんなんだ?」と首を傾げてる自分がいたりもする。
なぜローズマリーの赤ちゃん(1968)が名作と呼ばれるのか、そこから監督は考察し直したほうがいいでしょうね。
あと、仕掛けたのが老舗の映画プロダクションだった、という設定があまりにも古い。
70年代かよ、と私は思った。
佳作ですかね。
出来が悪いわけじゃないけど、突き抜けてるわけでもないという一作。
イメージを映像にするセンスはあると思いました。
良い脚本に出会えれば化けるかもしれませんね。