カナダ 2014
監督、脚本 グサヴィエ・ドラン
発達障害の子供を持つ母親が、法的手続きを経ることなく子供を施設に預けることが出来る架空の社会を舞台に、一組の母と子に焦点をあて、その愛憎渦巻く関係を描いた作品。
これまで一貫して性的マイノリティに悩む男性のドラマを撮り続けてきたドランがついにSFを撮るのか、と私は色めき立ったりしたんですが、蓋を開けてみればSFというほど大風呂敷な想像性はなく、いつものタッチ。
SF風な設定は、普通に生きていく事の難しい人たちが抱える問題をわかりやすく浮き彫りにするための仕掛けみたいなもの、と言えるでしょうか。
テーマは相当重いです。
15歳になるADHDの息子を抱える主人公の母親の苦悩は現状を打開するための道筋がはっきりと見えてこないだけに、その痛々しさばかりがどうしても目につきがち。
でも作品の色合いは決して暗いトーンではないんですね。
隣人の協力を得て、奇妙な共生関係を築きあげる展開なんかは、環境さえ整えばなんら問題ないのではと錯覚させるほど華やかで楽しげなんです。
もちろんそのままありもしない希望を掲げて偶然にもめでたし、めでたし、なんてことをドランがやるはずもなく、痛切で苦々しいエンディングが最後には待ち受けてるわけですが、それゆえ中盤のシーンは明暗のコントラストが激しいがゆえ問題提議とも映るよなあ、と私は思ったりしました。
はたして本当に改められるべきは制度なのか、母子なのか。
制度は母にとって、本当の助けとなりえているのか。
色んなことを考えさせられる作品です。
社会的弱者、少数派に対する愛情に満ちた目線が変わらず優しい秀作。
どこかマイマザーと似た質感もありますが、まあ、良しとしましょう。
20代後半でこれだけのものが作れたら上等。
余談ですが、この作品なぜかアスペクト比が1:1です。
その意図するところは私にはよくわからなかった。