ガンズ・アキンボ

イギリス/ドイツ/ニュージーランド 2019
監督、脚本 ジェイソン・レイ・ハウデン

強制的に、生死をかけたデスゲームに参加させられる暴力に無縁なプログラマー、マイルズの悲喜劇を描いたアクションコメディ。

両手に銃を無理矢理縫い付けられる(ビスで固定される)という絵面はおもしろかった、と思うんです。

なんせ両手の銃のおかげで着替えができない上、満足にトイレへもいけない、ドアノブを回すことすら一苦労で、もちろん食事はままならないし、ポケットの中身すら出せないわ、で。

日常生活がまともに営めなくなっちゃうんですよね。

かといって誰かに助けを求めようものなら「懐から銃を抜いた!」と周りはパニック。

主人公を追い込むのに恰好なネタだな、と思ったし、単純ながらもワンアイディアとして秀逸。

マイルズが大慌てする様子を見てるだけで楽しい、というのは確実にあった。

男たちの挽歌(1986)を茶化してるのかよ、とつい吹き出してしまったり。

ただね、この作品、どこまでも現実的じゃないのがネックで。

そりゃ2丁拳銃男マイルズは笑えますけど、ボルトが手のひらを貫通してる、及び指をビスが貫いてる状態で銃撃とか流石に無理ですから。

射撃の反動だけで激痛ですよ、そんなの。

そもそも感染症は大丈夫なのかよ、と思うし、おそらく数時間で手はパンパンに腫れると思うんですよね。

とてもじゃないけどデスゲームやれるようなコンディションじゃない。

物語の立ち上がりもかなり強引。

本気の殺し合いを中継するスキズムというネット動画サイトがあるんですけどね、そこに主人公が誹謗中傷を書き込んだのを見て主催者が激怒し自宅急襲、拳銃縫い付けの上、プレイヤーとしての参加を強制するんですけど、主催者はこれまでネットにアクセスしたことがないのかよ?って話でね。

いちいち悪意ある書き込みに反応してたらネットなんてやってられない、と誰もが知ってるわけですよ。

なのにわざわざマイルズのIPアドレス調べ上げて、暴行、脅迫に及ぶって、どんだけ暇なんだよ、と。

スキズム自体が普通に成立しちゃってるのも変。

私はてっきりどこかに囲い込んで(地下迷路とか廃墟とか)決闘させるものだと思ってたんですけど、なんと平気で街なかの殺し合いをプレイヤーに強いるんですよね。

私が見落としてるだけで、これは未来の話だったり、別の世界の話なのか?と訝しんだんですけど、そんな様子はまるでなくて。

どこの無法地帯な独裁国家なんだよ、と思うし、あまりに警察組織をないがしろにしすぎだろう、と。

これで足がつかない、検挙されない、というのはいくらなんでもファンタジーの度がすぎてる。

警察に協力者がいる、みたいな予防線が張られてはいるんですけど、協力者が100人いたってこんなの無理だわ、と大人なら誰でもわかると思うんですよね。

シナリオ進行もせっかくの突飛なアイディアをあんまり活かしきれてない。

終盤の展開はほぼ読めたし、なにより、誰が無力なプログラマーにヒロイズムを求めたか、ってことでね。

アメコミみたいになっちゃってるんですよね。

やるなら笑いに貪欲に、最後まで手綱を緩めずに爆笑でハッピーエンド(ブラックなオチでもいいけど)でしょうが、と。

予想外にカメラワークが多彩だし、あれこれ色々と小細工してて凝ってるな、とは思ったんですけど、ストーリーがあまりにもふわふわしすぎですね。

少年漫画レベル、と言われても否定できないと思います。

せめてもう少し毒があったらなあ、と思いますね。

荒唐無稽を覆い隠すきわどさ、度を超えた過激さがあればまた評価も違ったか、と。

しかし、ほんとダニエル・ラドクリフ君はなんでもやるなあ。

ハリーポッターのイメージを払拭する、と言う意味ではアキンボ(二丁銃)姿も悪くはなかったかもしれませんが。

タイトルとURLをコピーしました