悪魔のシスター

アメリカ 1973
監督 ブライアン・デ・パルマ
脚本 ブライアン・デ・パルマ、ルイザ・ローズ

悪魔のシスター

オープニングからして非常に薄気味悪いです。

これ、生理的に大丈夫なのか私?と不安にさせるものがあったりするんですが、一転、物語序盤は芸能界の底辺で生きるスターの卵のラブアフェアってな感じでやや拍子抜け。

今でいうストーカーの話?と勘違いしそうに。

突然、ストーリーが動き出すのは中盤から。

いきなりかよ!って思わずつっこみたくなるような虐殺シーンが見るものを震え上がらせます。

偶然の目撃者が奔走するシーンと、ダニエルが元夫と証拠隠しにあわてるシーンの分割画面はデパルマならではで、緊迫感たっぷり。

両方気になるんですけど、これ両方追えないよ!って、なったりもするんですけど。

ただ振り返るならですね、なんで元夫はダニエルをもっともよく知っていながら、彼女をここまで自由にさせてるの?という疑問が残ったりはするんですね。

事件の後のダニエルの豹変ぶりも納得いかないものがあったり。

サスペンスとホラーの狭間で双方を成立させようとした歪みの産物かもしれません。

多くの方が言ってるように白眉はやはりシャム双生児を外科手術するシーンの狂気じみた幻覚的演出でしょうね。

これはなまじっかなセンスで撮れるもんじゃないと思う。

突き詰めるなら、失われたもう一人の自分から解放されることのなかった哀れな女の悲劇と、そんな女に恋してしまった男の痛ましい末路を描いた作品なわけですが、もう少し果敢にダニエルの内面に切り込んで欲しかった、という欲はあります。

そこがはっきりしないので、単に見世物小屋的なグロテスクさばかりが強調されてしまった印象はありますね。

ただそれも、作中で登場人物の1人であるライフの記者が言った「人は変わったものをみたいんだ」というセリフに集約されてしまうのかもしれませんが。

とりあえず強烈なインパクトがあるのは確かです。

忘れられないなにかが記憶に残っちゃいますね。

余談ですが、この作品のテーマを完結させたのが萩尾望都の「半神」かな、と思ったりもしました。

コメント

  1. […] 舞台にもなった衝撃の短編「半神」。これがもし、ブラックジャックの一話なら「快楽の座」や「植物人間」のように封印されたりしたんだろうか、と言う思いがちらりと頭をかすめたりもしますね。色んなところで色んな人がこの作品について論じておられますが、私がすかさず思い出したのはデ・パルマの悪魔のシスターであり、クローネンバーグの戦慄の絆であったりしました。何を描こうとしていたのか、おおよその見当がつかなくはないんですが、やっぱり短編で伝えきるにはページ数が足りなかったか、と言った印象。せめて100ページあればエンディングも変わっていたように思います。強烈な読後感を残す作品ですが、どう評価していいか悩む部分もあったりも。「ラーギニー」「スローダウン」「酔夢」はイマジネーション豊かなSF短編。マンガならではの絵の説得力が光る。「花埋み」「紅茶の話」「追憶」「パリ便り」は絵物語。「ハーバルビューティ」はコメディ調の宇宙SF。 きちんとSF的なオチが用意されているのが好ましい。「あそび玉」はいわゆるエスパーものなんですが、地球へ・・の萩尾版を読んでいるような感じも。一番の異色作は「マリーン」。間違いなく萩尾望都はこういう演出はしないと思われる描写があちこちにあり失笑。原作つきだとこうも違うのか、と驚かされる。くさくならない、と言うのが萩尾望都最大の長所かも知れない、と本作を読んでいてふと思ったりしましたね。それでもエンディングはきっちり自己流に手直しされており、感心。 […]

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