アメリカ/フランス 2002
監督、脚本 ブライアン・デ・パルマ
ものすごく簡単に言ってしまうと悪女を描いたサスペンスなわけですが、シナリオがね、これ、どうなんだろう、と。
終盤ぐらいまではまあ、悪くはない、って感じだったんです。
相変わらずカメラワークが流麗で、お得意の分割画面も大活躍、ああ、デパルマらしいなあ、今回は回帰路線か、とファンとしては定番ながらも安心してみれる出来でして。
悪女リリーを追う悪党仲間が衝動的過ぎてかなり頭が悪いけどこれは作品的に大丈夫なのか?とか、アントニオ・バンデラスがあまりにも冴えなくてその使えなさに驚いたとか、色々ありましたが、顛末が気になるテンションは維持していたように思います。
問題はやっぱりどんでん返し。
これねー、ある種禁じ手なんじゃないか、と思うわけです。
なんでもあり、になっちゃいますしね。
これを良しとする、ということは「正しく生きなさい」と宗教的、道徳的に諭すのと同義になってしまうと思うんですね。
前半でさんざん猥雑極まりないことやっておいて、最後に説教かよ、風俗で嬢を諭すオヤジか、お前は!となっちゃいますわな。
さらにひどいのがラストシーン。
トラックの運転手、完全な巻き添えで被害者。
可哀想過ぎて目もあてられない。
運命は残酷で、数ある選択肢がその命運を分ける、とでも言いたかったのかもしれませんが、そこまで冷徹に傍観者をきどるのであれば、バンデラス演じるパパラッチや警部や大使のその後の生活も描写すべきであった、と思います。
でないと意図が伝わりにくいし、このままじゃあリリー1人勝ちでウハウハ、としか見れないわけです。
なんとなくリリーが改心したかのように見せかけて、実はただ単に後味が悪いだけ、というよくわからない作品でしたね。
デパルマらしいんですけどね、どうにも解せない、というのが私の正直な感想でしょうか。