さすがの猿飛G

2017年初出 細野不二彦
小学館ヒーローズコミックス 全4巻

作者を一躍人気漫画家にのしあげたさすがの猿飛の続編。

前作は忍ノ者高校が舞台でしたが、今回は忍ノ道学院がその活躍の場。

魔子ちゃんが19歳になってるので、おそらく学院ってのは忍者大学的な位置づけなんでしょうけど、忍者が大学なあ・・・と思わなくもありません。

学園ものをもう一度やるためには、肉丸と魔子ちゃんを進学させるしかなかったんでしょうけど、仮にも諜報組織の秘密工作員として将来を嘱望されてる特殊な人材を、悠長に6年も7年もかけて仕込んでる場合か?と小首をかしげたり。

忍ノ道中学が存在することが前作で言及されてますんで、それを勘定に入れるともっと長い専門教育をほどこされてるわけです。

誰が(どこが)スポンサーなのかわかりませんけど、さすがにのんびり屋さんすぎるだろ、と。

忍者バトル・ファンタジー(コメディ)に、真面目につっこんでるんでるんじゃねえ!って言われるかもしれませんけど。

やっぱり個人的には、続編なら、世界を股にかけて活躍する肉丸と魔子ちゃんのコンビを見てみたかったですね。

それこそ007とか、ミッション・インポッシブルのようにスパイ・アクション風な感じで。

コメディ色の強いスパイ映画も多数発表されてますんで、できなくはなかったんじゃ?と思うんですが、編集部から「学園もので!」みたいな要請でもあったんですかね?

ぶっちゃけ、還暦迎えての学園ものは相当きついと思うんですよ。

そんなの怪物高橋留美子ぐらいしか成功してないですから(あだち充は特殊なケースなんで別として)。

実際、読んでて「イタイ・・・」と感じるノリが地雷のように点在してて。

私のようなオッサンですらイタイと思うんだから、若い読者なんて言わずもがな。

他国籍人を受けいることによってグローバル化した学院内の、人種間民族抗争みたいな方向へ話を進めていったのも賢明だとは思えない。

それをやるなら学院の外側で、でしょうが!と。

キャラクターが変わっただけでやってることは結局、お山の大将を決める学校内番長決定戦みたいな感じになっちゃってるんですよね。

で、肉丸ってのはそういうのを横目で見ながら我関せずで、気がつけばなんか食ってるおとぼけキャラだったはずなんですよ。

・・・・割と積極的に争い事に介入してたりするし。

しかもやたらしゃべるし。

なにがショックだったか、って、肉丸のキャラがおよそ35年を経て、太ってるだけの別の人に成り代わっちゃってたこと、でしょうね。

作者自身が、肉丸ってのはどういう人物だったか、忘れてしまってるというか。

4巻で打ち切られてしまったのも納得ですね。

これ、続編とは名ばかりの「似て非なるもの」です。

描いてる本人が手探りで「かつての作風」を模倣してる状態。

ああ、細野不二彦はもうあの頃のような、ドラマチックで脳天気なコメディ(少年漫画)は描けないんだなあ、と強く実感した一作でしたね。

バディドッグがあんな風になってしまったのも、なんとなく納得。

まあ、作者の年齢が年齢ですし、仕方がない、とは思うんです。

でも、あの頃のようにやれる自信がないなら名作の続編には手を出してほしくなかったですね。

えっ、ひょっとして自信満々だったのか?作者?

それはそれで怖い話だけど。

さて、ここからどこへ行くんでしょうね、細野不二彦は。

「2」とか「新」って、最後の手段ですしね、その先に待ち受けてるのは永井豪の「激マン」や島本和彦の「アオイホノオ」みたいな自叙伝的随想録?みたいな方向しかないように思うんですけど、まだそれをやるのは早すぎるだろ、と思う愛読者としての自分が居たりもします。

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