愛しのバットマン

1991年初出 細野不二彦
小学館ビッグコミックス 全13巻

プロ野球球団で4番バッターを務める雄太郎とその妻リカの、おしどり夫婦ぶりを描いたコメディタッチのホームドラマ/野球漫画。

細野漫画に陰と陽があるとすれば、この作品は間違いなく陽に属する作品で、なんだかかつてのワクワク感を再体験させてくれるような内容だったりはしますね。

さすがの猿飛を通過してる人は、肉丸と魔子ちゃんの揺るがぬ固い絆をなにげに思い出したりなんかもするはず。

やっぱりこういうことをやらせたら細野不二彦は圧倒的にうまいですよ。

なんかもう素直に、ああ、いいねと思えるし、随所でクスリと笑えたりなんかもして気持ちが温かくなる。

得意なパターンを焼き直してるだけかもしれませんけどね、どのような場においても、やろうと思えばこれぐらいの水準のことは普通にこなしてみせる、ってのはやはり並外れた力量であり才能のなせる技だと思うんです。

そりゃね、もう少し物語に落差というか飛躍があればなあ、と思ったりしなくはないですが、野球漫画と言う体裁で、試合以外のドラマをかくも多彩に切り回す手管は他には見当たらないものですしね、そこは称賛されてしかるべき。

というか、いい意味でここまで野球に集中してないプロ野球漫画も珍しいですよ。

水島新司のあぶさんですら、もう少し気を使ってる、って話だ。

おそらく、スポーツ漫画にこれまでなかった角度の視座を設けたかったんでしょうね。

ま、いささか、地味といえば地味なんですけど、私はなんかこの漫画好きですね。

しかし太郎TAROはなんでこういう風に仕上がらなかったかなあ、やってることはほぼ同じなんですけどね。

さりげない日常(プロ野球選手の日常がさりげないかどうかは別として)が愛おしく思える秀作。

仲よき事は美しき哉。

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