ごめんあそばせ

1992年初出 細野不二彦
スコラバーガーSC 全3巻

食品会社に務める美人OL、鬼龍院ひな子の屈折した振る舞いを描いたオフィスギャグ。

簡単に言っちゃうなら、平成版いじわるばあさん(長谷川町子)ってな感じなんですけど、ババアが底意地悪いんじゃなくて、バリバリ仕事もできる才媛がなぜか性格ネジ曲がってる、ってのが本書のミソですかね。

美人が性格悪いのはありがちといえば、ありがちなんですけど、ひな子の場合、おかしなこだわりや性癖が、明らかに自分自身の足を引っ張ってるのにも関わらず、それをやめることができない、ってのが特徴。

もうシンプルに変な人なんです。

でもそこに負の感情に支配された悪意がないから、客観的に見ててなんかかわいい人だな、と思えてくる、ってのが細野不二彦のうまさでしょうね。

恐ろしく早い「ツンデレ」という解釈も可能では?と思ったりもします。

別のページでも書きましたけど、こういうことをやらせたらまさに作者の独壇場。

登場人物達の年齢があがっただけで、やってることは少年誌的なギャグ、との指摘もあるやもしれませんが、あたしゃあえて妙齢のお姉さんを使いまわしてバカをやるコンセプトにゲハゲハ笑った。

男性漫画家の感覚でなかなかここまで描けないと思うんですよ。

添え物的にストーリーをかき回していくんじゃなくて、ちゃんと主人公として立脚してますからね、ひな子は。

当時、女性漫画家もどんどんギャグ漫画に進出してきた時代だったと思うんですが、女性の描く女性キャラ以上に普遍化した「笑える女性像」を作者は創出していたように思いますね。

ま、伊藤理佐とか、あの辺りと比べるとまた話は変わってくるんだけど。

連載中断してしまったのが本当に残念。

掲載誌であるコミックバーガー自体がなくなっちゃったからなあ、どうしようもないですね。

どこかで復活してくれんものか、と長年思ってたんですが、どうやらもう再開はなさそう。

細野ギャグ独特の良質なユーモアセンスが満載の秀作。

初期のファンは是非。

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